長谷川幸洋東京新聞論説委員を招き第130回国際問題懇談会を開催
2009年12月03日更新
「日本の真の権力者と鳩山内閣の今後の展望」をテーマに講演=鳩山政権の課題や政局について率直に意見交換
とき
平成21年(2009)12月3日(木)12時〜14時
ところ
帝国ホテル東京「北京」
概要
長谷川幸洋東京新聞論説委員をお招きし、第130回国際問題懇談会を開催した。
内容
民間外交推進協会(FEC)は12月3日、長谷川幸洋東京新聞論説委員を帝国ホテル東京に招き、第130回国際問題懇談会を開催した。開会に際してFEC副会長の松澤建(学)青山学院理事長が、「総選挙で大勝した鳩山政権の政策が現実に動き出した、「日本郵政人事」「事業仕分け」「普天間基地問題」が話題を集めたが、即効的なデフレ対策が未だ発動されず、国民の不満も高まっている。講師の長谷川東京新聞論説委員は、政策決定メカニズムに知悉した、政治評論の第1人者。本日は鳩山政権の実情と今後の展望につき率直な見解を伺いたい」と、講師紹介を兼ねて挨拶。懇談会には、岡崎真雄ニッセイ同和損害保険(株)名誉会長、武田邦靖AOCホールディングス(株)取締役会長、米澤泰治米澤化学(株) 代表取締役社長、名倉三喜男興和不動産(株) 代表取締役社長、小林哲也(株)帝国ホテル代表取締役社長ら、FEC役員、会員が多数出席した。長谷川講師はオフレコを交えながら、「日本の真の権力者と鳩山内閣の今後の展望」と題した講演を行った。その後出席者と、鳩山政権の政策決定過程、政局の展望等を中心に活発な質疑応答が行われた。出席者からは、政策運営の実態や混迷する政局の動きなどが理解できたと好評を博した。
この2ヶ月の鳩山政権の評価は「政治不在」につきる。自民党政権時代は、党や閣僚が夜動き政治が決定されていたが、鳩山政治では類似の動きは見られない。11月に入り、JAL問題や円高進行で断崖絶壁に立たされ、初めて政治が動いた。鳩山政権は政治主導を標榜したが、官僚側の時間操作は巧みだ。閣僚を説明漬けにする一方、総理の日程を社交等で埋め、閣僚との協議の時間を作らせない、という手法だ。予算編成、税制改革、JAL再建、普天間基地問題の4大課題は、いずれも総理決断が必要であるが、首相・閣僚協議の時間がとれず政治決定が先送りされると、支持率がどんどん低下する。鳩山政権に現状認識があるか怪しい。
予算編成と税制改正が政治の8割を占める。予算の年内編成に拘ると、日程を管理する主計局に主導権を奪われ、政治主導とならない。丹後新財務次官は7月就任時に「年内予算編成」に言及、早くも杭を打っている。橋本大阪府知事も主張したが、「暫定予算でよい」と、自分も当時鳩山代表に進言した。財務省は行政刷新会議事務局次長にも人を送り込み、膨大な「事業仕分け」の作業日程を組んだ。仕分け人を疲れさせ追求の手を甘くし、実質的に主導するという狙いだ。鳩山献金問題の行方も財務省に牛耳られている。贈与、貸付金かは国税局の判断次第であり、財務省は支持率と献金問題の様子見状態だ。ガソリン暫定税率廃止と温暖化対策税の導入も政治決定が必要だが、調整作業はなく「政治」は動いていない。
普天間基地問題も同様で軸となる首相官邸機能が不在で、閣僚間の意見が食い違う。自民党政権時代、外交・防衛・安全保障問題の政府方針決定メカニズムが確立し機能していたが、今は機能していない。菅副総理の国家戦略室の使命は外交、予算、経済成長の戦略作りであったが、夫々外務、財務、経産の各省にとられてしまった。
官邸政治不在の中、亀井大臣が中小企業対策、日本郵政人事、新党構想で動き、政治に本気で手を突っ込んできている。政治は相場感で動きメディアがその手段となる。舞台を作る政治家が注目されるが、今は亀井氏だ。亀井氏の狙いは自民党の奪取にあり、来夏の参議院選で青木氏と新党を結成し、政界再編することか。民主党小沢幹事長の自民党解体の思惑とも一致する。
米澤泰治米澤化学(株) 代表取締役社長:民主党分裂の懸念はないか。
講師: 亀井・青木・小沢ラインは、民主党の反小沢グループに対するカードになる。民主党議員も亀井発言に動揺しており、政局を睨んだ情報収集が活発化している。自民党、民主党が共に崩壊した後でないと政治が再構築されない。
武田邦靖AOCホールディングス(株)取締役会長:予算は景気に、普天間問題は対外的に夫々影響が大きい。政治決定はいつ頃になるのか。
講師:政権当事者が実態認識に欠け、官僚のやりたい放題になっている。何が起きてもおかしくない。150人の勢力基盤を有する小沢幹事長は、政局を気にせず白紙の構えだ。官庁の1,2位として権力を握る財務省、法務省も政権の行方は関係ないと思っている。
松澤建(学)青山学院理事長:将来の政界再編後の首相候補はいるか。
講師:数人しか成長している政治家はいない。谷垣、与謝野氏は財務省の言いなりだ。官僚は多くが小沢幹事長を向いている。官僚任せであった自民党の政策構想力が急落しており、政策ビジネスの好機だ。例えば、地方分権で移譲する財源は地域偏在が少ない消費税であるべきと思うが、与野党とも「消費税の社会保障(年金原資)税化」を主張している。これでは、消費税がすべて国税となり移譲不能となる、財務省の地方分権つぶしだ。
松澤建(学)青山学院理事長:国民が選挙で民主党を選択した。予想に反した現状に対して、国民の認識・考え方を変える必要もあるのではないか。
講師:特ダネ競争で、霞ヶ関の官製情報中心に依存しているメディアの報道方法が重要となる。
田丸 周油研工業(株)常勤監査役:政局を迎え、亀井、青木氏の表舞台への登場の仕方によっては民主党を選んだ国民の反発も予想され、逆に民主党の結束を強めることにならないか。
講師:政局は株式市場と同じ。福田政権末期のように、皆が「終わった」と思うと終わる。財務省、法務省(検察)、亀井氏など誰かが仕掛けて現政権が壊れるのではないか。小沢幹事長も勢力固めから党内締付けを強化している。
角田保行日本モレックス(株)人事総務総本部長:政治家とブレーンの関係は。彼らが考える霞ヶ関改革の方策はあるのか。
講師:自分は安倍政権時代に高橋洋一元財務官僚と首相を支えた。自分の考える財務省の機構改革は、主計局を内閣予算局に格上げし、主税局を歳入庁へ分割する案だ。このうち内閣予算局の格上げについては、同意する幹部もいる。彼らも小沢幹事長と同様に、「自己実現」が重要で形は気にしていない。日本の政治に対する外国の評価は低下した。霞ヶ関改革を進めるべきだが、公務員という武士階級が残っており、時間がかかる。明治維新も20年近く要した。
(田丸周FEC常任参与・油研工業(株)常勤監査役・記)