初来日のキー・ニュージーランド首相を招き歓迎午餐会と日本・NZ経済問題懇談会が盛会裡に催される
2009年10月28日更新
NZ政府から公式日程初日のスタートにふさわしい心の触れあう実質的な催しであったとの首相からの謝意がFECに寄せられた
とき
平成21年(2009)10月28日(水) 正午〜13時45分
ところ
帝国ホテル東京「桜の間」
概要
キー・ニュージーランド首相を招き歓迎午餐会と日本NZ経済問題懇談会が盛会裡に催される
内容
42名(NZ側・キー首相と随員8名と3人の経済人、FEC側・内藤明人副会長、埴岡理事長等30名)
民間外交推進協会(FEC)は10月28日、ニュージーランド(NZ)のジョン・キー首相を来賓に招き、歓迎午餐会・日本NZ経済問題懇談会を帝国ホテル東京で開催した。NZでは昨年11月の総選挙で、キー党首率いる国民党が9年ぶりに政権を奪回した。FECは、新政権のマッカリー外相、イングリッシュ副首相・財務相の来日時に、両閣僚らを招いての懇談会を開催したほか、駐日NZ大使館と共同で「食の安全シンポジウム」を催すなど、NZと極めて親密な関係にある。今般、キー首相の公式訪問の機会に、同首相一行を招きFEC役員等との歓迎午餐会・経済問題懇談会を開催した。NZ側は、ケネディ駐日NZ大使、元駐日大使のウイーヴァーズ首相内閣府事務次官らが同席し、来賓として高橋利弘駐NZ日本大使が出席した。FECからは、内藤明人リンナイ(株)取締役会長、荒木浩東京電力(株)顧問、生田正治(株)商船三井相談役、笹森清FEC評議員会副議長・元連合会長らFEC役員、法人会員、在日NZ企業代表者が多数出席した。
開会に際して内藤明人FEC副会長・リンナイ(株)取締役会長は、「キー首相の初来日を歓迎し、昨年の総選挙での勝利をお祝い申し上げる。本会合は、キー首相初来日の初日の公式行事として、天皇、皇后両陛下謁見に続くもので大変名誉。FECに対する期待の証として嬉しく思う。日本も半世紀ぶりの政権交代があり転換期。時宜を得た開催で、率直な意見交換により両国関係強化に貢献したい。本日は味の素の山口会長はじめ食品企業関係者も多く出席された。食を通じた交流をFECの柱として発展させる所存。77年にリンナイNZを設立、90年よりNZの名古屋名誉領事を務めている。名誉ある勲章もいただき今後も交流促進に尽くしたい。両国関係の一層の発展を祈念し、乾杯したい」と主催者挨拶。乾杯の後、進行役の埴岡和正FEC理事長より、「内藤会長の言われた祈念、祈りは人間の情念の核心。金融危機後の日本はじめ世界の閉塞的状況も祈りのような国家運営で打開していくことが肝心だ」と挨拶があり、続いてキー首相より、両国関係の展望、日本への期待等を中心に概要下記の挨拶を兼ねての所見が述べられ、その後出席者と日本料理の昼食を共にして和やかに意見交換を行った。
内藤会長のNZへの長年の貢献に感謝し、副首相、外相訪日時のもてなしも含め、FECの日本NZ関係強化への貢献に御礼申し上げる。両国は価値観を共有する重要なパートナー。鳩山首相との会談に期待している。60年代以来日本は上位貿易相手国で、NZは食肉、乳製品原料、魚、野菜等の食品を輸出し、良好な関係にある。高度な日本市場の消費者の要求は高いがNZ製品は高品質と安全性で評価を得ている。来年初めのFEC調査団のNZ訪問を歓迎したい。日本からの林業、食品業への直接投資も関係強化に貢献している。ゴールドキウイや生花の栽培、健康食品の提供など、農家の連携・交流が活発。第3国市場開拓にも積極的だ。経済的に相互発展することが重要だ。NZは日本とのEPA/FTA締結を希望している。両国関係が飛躍的に拡大し消費者メリットも大きい。微妙な問題を理解した上で合意したい。今日、両国外相間で科学技術協力協定に署名する。
日本語はNZで最も人気のある外国語。観光は人の往来となり重要。NZが主催する2011年ラグビー・ワールドカップの宣伝に合わせて観光名所を紹介したい。ラグビー交流の歴史も古く、2019年は日本が主催国となり関係が強化されよう。安全保障面の協力も強化された。NZは国連での日本の役割に敬意を表し、安保理常任理事国入りを引き続き支持している。NZのCO2削減目標はコペンハーゲンでの合意を前提として、「20年迄に90年比10〜20%減」。農業部門で14%削減可能とする、「グローバル・アライアンス構想」を鳩山首相に話したい。NZはアジア太平洋地域の安定と繁栄に、日本と共に取り組む。APECや東アジアサミットを通じて、外交、通商、科学技術等広範且つ緊密に協力している。
埴岡和正FEC理事長:公式日程の初会合にふさわしい情熱的且つ野心的な名スピーチ。EPA締結、緊密な人的交流、安保協力等について述べていただいた。
=続いて双方の出席者を紹介=
笹森清FEC評議員会副議長・元連合会長:鳩山首相か菅副総理の来賓出席をいただく予定であったが、国会の代表質問日の初日にあたり残念ながら出席できなくなった。両国の労働組合組織間の交流は緊密であるが、労働者交流は薄いので機会を設けていただけると有難い。42日目の鳩山政権への失望感が高まるのではと心配している。自分も云うが、キー首相からも、(1)「脱官僚」の色が褪せてきた、(2)「無駄遣いの廃止」の内容・手順が不明確、(3)「鳩山イニシアチブ(CO2削減目標)」実現方策、特に中国・インドへの働きかけ方法、について助言があればお願いしたい。
キー首相:FTAには労働基準、環境権利が盛り込まれており、FTA締結は労働者交流面からも望ましい。NZの排出シェアは低いが、再生可能エネルギー比率を引き上げる計画。世界の食糧需要増大への対応、食の安全が課題。環境技術の途上国移転も重要。農業のグローバル・アライアンスは強力だ。日本とNZが一体となって模索する必要がある。
生田正治(株)商船三井相談役:日本は観光庁を設立し観光促進に注力している。外国からの来訪者数を07年の830万人から20年2千万人が目標。政府間の協力が必要だ。日本が支持する東アジア共同体構想についての感触はいかがか。
キー首相:観光については、両国に多くの機会がある。NZの輸出の20%、GDPの10%を占める重要分野。自分は観光相兼務だ。アドベンチャー観光が両国の若者に人気だ。「東アジア共同体には一層の検討が必要」と中国で話した。また、「成長が高い地域の貿易自由化が重要」と、東アジアサミットの場で話し合った。鳩山首相の考えを伺いたい。両国間では食品分野の協力が重要で、市場の高い要求への対応が鍵だ。
山口範雄味の素(株)代表取締役会長:当社のアセアン・オセアニア市場取引は年1500億円、NZとの取引は限定的。アミノ酸を家畜に投与すると、飼育期間の短縮化と排泄物が少なく環境に優しい効果がある。食品と調味料の協力も検討したい。食品分野の協力には食文化への深い相互理解が必要だ。
キー首相:中国温首相との会談から、NZで中国技術者と協力して中国の食品安全基準導入PJに取り組んでいる。中国の消費者意識も向上している。NZの食品基準は厳しく、FTAも実務家の尽力により商品・技術一体で検討されている。
吉田 康(株)ブルボン代表取締役社長:NZから徹底管理された原料(乳飲料、ボイセンベリー等)を調達しているが、問題はなく円満な関係だ。NZ側の期待に沿うべく、日本への定着と中国・アジア向け商品に育てたい。
関本吉成東都水産(株)代表取締役社長:メロ、金目ダイ等冷凍水産物を輸入している。日本の漁業は高齢化から衰退する懸念がある。漁業の存続についての考えを伺いたい。
キー首相:NZは乱獲防止から漁獲割当制度を導入し、積極的に運用している。消費者の需要充足と漁獲量保護のバランスがむずかしい。
埴岡和正FEC理事長:キー首相からは食をテーマとする来年のFECニュージーランド経済事情等調査団の訪問に歓迎とその際には再びお会い下さるとのお言葉をいただいた。両国は共に島国で共通点も多い。中国との付き合い方を含め、安全保障、経済等多くの分野の関係強化が東アジア、世界の繁栄に貢献できよう。経済交流面では、食を通じた交流促進にFECは微力ながら尽力したいと閉会あいさつ。
この後、内藤FEC副会長とキー首相の間で記念品が交換され、別室でFECとNZ双方の出席者一同の記念写真が撮影された。
(田丸 周FEC常任参与・油研工業(株)常勤監査役・記)