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ジャドマニ新駐日パキスタン大使を招き第125回FEC国際問題懇談会を開催

パキスタン 国際問題懇談会

2009年07月27日更新

日本とパキスタンとの交流促進をメインテーマに、テロ、ODA問題などをサブテーマとして大使とFEC役員が率直かつ活発な議論を展開する

講演するジャドマニ駐日パキスタン大使

講演するジャドマニ駐日パキスタン大使

第125回FEC国際問題懇談会であいさつの埴岡FEC理事長

第125回FEC国際問題懇談会であいさつの埴岡FEC理事長

とき

平成21年(2009)7月27日(月) 12時〜14時

ところ

帝国ホテル「北京」

概要

新駐日パキスタン大使を招き第125回FEC国際問題懇談会を開催

内容

民間外交推進協会(FEC)は7月27日、ヌール・ムハマド・ジャドマニ・駐日パキスタン大使を帝国ホテル東京に招き、第125回国際問題懇談会・昼食会を開催した。FECはインドとは日印文化経済委員会の活動を通じて、20年来関係強化に成果を挙げているが、今般他の南アジア各国との友好関係を深めるべく、インドと並ぶ大国のパキスタンのジャドマニ新駐日大使を招き、国際問題懇談会・昼食会を開催した。パキスタンとアフガニスタンとの国境地帯はイスラム過激派の拠点となっており、2001年の米国同時テロ以降、「テロとの闘い」の最前線でパキスタンはテロ対策を実施している。4月に東京で開催されたパキスタン支援会合でも、経済問題、テロ対策等の困難な課題に取り組むパキスタンを国際社会が一致して支持する姿勢が確認され、日本政府は10億ドルの支援を表明している。

開会に際して埴岡和正FEC理事長が、「日本のパキスタン報道はテロ、治安悪化、汚職が殆どだが実情を知りたい。かつてはインドと並ぶ経済力があったが、今は厳しい状況だ。本日は大使のご就任を祝うとともに、パキスタンの現状を理解し、経済交流と両国関係促進の一助になればと願っている」と主催者挨拶。昼食懇談会には、生田正治(株)商船三井相談役、岡崎真雄ニッセイ同和損害保険(株)名誉会長、三好孝彦(株)日本製紙グループ本社特別顧問、田中宏(株)クレハ取締役会長、小林哲也(株)帝国ホテル代表取締役社長ら、FEC役員・会員が多数出席した。中華料理の昼食会では、ジャドマニ大使が、最近のパキスタン情勢、テロ対策、日本への期待等を中心に概要下記のあいさつを兼ねての説明を行い、その後出席者と昼食を共にして活発な意見交換を行った。

懇談要旨

パキスタンは多様な地形で、広大な高原や世界第2位の高峰K2があるカラコルム山脈など美しい自然に恵まれている。地政学的にも重要な位置だ。豊かな文化遺産も多く、メヘルガル遺跡や北西部はガンダーラ文明発祥の地だ。仏教もパキスタンから中国、日本へ伝播した。両国の歴史的ルーツは繋がっており、日本はわが国発展の良きパートナーだ。4月の日本の10億ドルの援助に感謝する。

パキスタンの政治は穏健で、170百万人の国民は穏和で意思が強い。医者、技術者など国内外で活躍中。世界に提供できる人材は多いがテロ問題が翳りをつけている。テロ根絶が課題で国際社会の支持もあるが、わが国ほど物理的、精神的に苦しんだ国は他にない。紛争地域(連邦直轄部族地域)は国土の僅か5%で、産業の中心地から離れている。政府はテロ難民の救済に取り組んでおり、日本政府の支援に感謝。民間、慈善団体の支援も期待する。

テロ撲滅キャンペーンには成功したが、この間の経済損失も大きい。世界不況の影響が加わり、輸出・外国直接投資の減少、高インフレ、外貨準備の減少、財政赤字拡大から深刻な経済危機に陥り、IMF借款を余儀なくされた。緊縮財政や補助金の削減等により経済指標は好転したが、なお苦境にある。テロ対策に追われ教育、医療に資金が回っていない。打撃の大きい繊維、農業への支援を期待する。繊維産業への保護関税のほか、GDPの22%、人口の66%を占め、貧困層が最も多い農業は、生産性向上と価格の見直しが必要だ。日本の貯水技術や肥料分野の協力を期待する。電力・ガス不足も深刻で農業、製造業に影響している。総合エネルギー計画では、水力、風力、原子力発電等にダム建設、設備増強が必要。日本の民間企業の投資を期待しており、カラチに2500エーカーの特別経済区域を提供可能だ。トヨタ、ホンダは進出済だ。首相は特別チームを組成し投資関連の法的手続きを簡素化した。

懇談・意見交換

埴岡和正FEC理事長:両国首脳の意思疎通・対話は進んでいるのか。「テロ」とは何を指すのか。

ジャドマニ大使:国際紛争への対処について両国の理解は一致しており、首脳交流も進んでいる。4月の会議(パキスタン・フレンズ会合、支援国会合)は有意義であった。日本の新首相に来訪して欲しい。「テロ」の定義はない。アルカイダ、タリバーン等の過激派だ。地元民は支持せず根絶させる意思がある。

生田正治(株)商船三井相談役:アフガン国境地帯は管理不能で世界に恐怖だ。日本人は貴国に共感を持つが、同時に頑張って欲しいと願う。政権交代の長所・短所と、日本の投資家が留意すべき点は何か。タリバーン等のテロは思想をもつ政治運動か。

ジャドマニ大使:旧政権はタリバーンとの「取引」(武装解除)に失敗し、「政府は弱くタリバーンは強い」と論評された。新政権のテロ対策は与野党の全面支持があり、「テロと闘う」ことで一致している。難民も戻りつつある。過激派への武器・資金は外から入ってくるので根絶には他国の協力が必要。紛争地域は狭い範囲で他地域は正常だ。

田中宏(株)クレハ取締役会長:日本・パキスタン関係は問題ないが、国際社会では貴国の原子力開発に疑念がもたれている。

ジャドマニ大使:ある時期メディアに注目されたが、わが国の原子力施設は完全に安全だ。人的管理能力も問題ない。

宮脇宗嗣スカラキャピタルマネジメント(株)取締役会長:かつて貴国から北朝鮮に核技術が流出したとの報道があった。日本の貴国への援助資金は無色故に日本国民としてはその使途が心配だ。

ジャドマニ大使:国連の一員として、わが国も北朝鮮の非核化を支持する。日本からの援助の使途は透明だ。財政資金の不足はIMFから借りる。

田丸周油研工業(株)常勤監査役:貴国は対インド紛争から核保有に走った。今やインドの成長力を貴国の経済復興に活用すべきで、日本の経済界も期待していると思う。

ジャドマニ大使:インドとの対話は続いており、安全保障、カシミール問題、経済問題等広範に議論される。両国首相は今月エジプトで会談、昨年11月のムンバイ同時テロで停止されていた定期対話を再開した。両国とも民主国家でアセアン地域フォーラムにも参加している。

三好孝彦(株)日本製紙グループ本社特別顧問:テロ根絶のための平和的解決策はあるか。

ジャドマニ大使:テロの背景に貧困があり、貧困対策が重要だ。テロは2001年以前の、79年のソ連のアフガン侵略時から始まった。テロ集団は自由のために闘うヒーローと映った。彼らを見捨てずに、アフガン復興に役立てていたら事態は変わっていたであろう。70年代まではタリバーンも存在せず経済は発展した。貧困者に対する財政支援と職業訓練により、経済を発展させればテロ問題はなくなろう。

武居信男蘭日貿易連盟日本代表:大使の言う特別経済区域のインセンティブ、有望業種は何か。

ジャドマニ大使:インド沿岸に隣接し港湾に近い平地。加工輸出産業に優遇措置がある。ガス、エネルギー、貯炭、製鉄等が進出している。将来のインドとの経済交流に適地だ。

埴岡和正FEC理事長:テロの根は貧困だが、汚職も投資家には心配だ。ジャドマニ大使は新政権下で着任され、日本との関係強化に尽力されている。FECとしても南アジア各国との関係を深めていく所存で、引き続き意見交換、相互理解に努めたい。

ジャドマニ大使:新政権下で、前政権に解任された判事の復職を求める街頭抗議デモが発生した。今はメディアが強力で汚職を許さない姿勢だ。全政党参加の政府でテロ対策も意見が一致している。社会統治が厳格化した。本日は有意義な意見交換であった。次回は是非皆様を当大使館にお招きしたい。

(田丸 周FEC常任参与・油研工業(株)常勤監査役・記)

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