日本メキシコ交流400年に際しカバーニャス駐日メキシコ大使を招き第122回FEC国際問題懇談会を開催
2009年06月16日更新
大使は「次回はぜひFEC役員、会員を当大使館に招き懇談会を催したい」と述べ、FECとメキシコとの交流事業に期待を表明
とき
平成21年(2009)6月16日(火) 12時00分〜14時00分
ところ
ホテルオークラ東京
概要
ルイス・カバーニャス駐日メキシコ大使を招き第122国際問題懇談会・昼食会を開催。
内容
日本とメキシコ交流400年、国交120周年に際して
民間外交推進協会(FEC)は6月16日、ルイス・カバーニャス駐日メキシコ大使を招き第121回FEC国際問題懇談会・昼食会をホテルオークラ東京で開催した。本年は日墨交流400周年にあたり多彩な記念行事が予定されている。メキシコには日本企業も多く進出し経済的には極めて密接な関係があり、2005年に日墨経済連携協定(EPA)が発効した。メキシコは、新型インフルエンザ発祥で世界の注目を集めたが、各国の適切な対応が功を奏し感染騒ぎは沈静化している。
開会に際して埴岡和正FEC理事長より、「カバーニャス大使は在勤5年に及ぶ大変な親日家で日本各地に多くの友人を作られた。両国は交流400年を迎え、経済を中心に関係が深い。本日は両国関係強化に向けて率直な意見交換をしたい」と主催者挨拶。続いて、カバーニャス大使より配付資料に基づき、両国関係の歴史、記念行事等についての講話があり、講話後は出席者と一問一答の昼食懇談会が行われた。懇談会には、FEC副会長の荒木浩(株)東京電力顧問、日米副委員長の渡邊五郎森ビル(株)特別顧問、理事の新町敏行(株)日本航空常任顧問、大戸武元(株)ニチレイ相談役ほかFEC役員、法人会員ら多数が出席した。
新型インフルエンザ問題では大統領がリーダーシップを発揮し厳しい措置をとった。世界保健機関(WHO)や各国との協力により事態は沈静化に向かいつつある。今日では日本政府との意思疎通も進んでいる。今後とも情報提供を密にしていきたい。
新大陸に到着したスペイン人は1521年メキシコを征服後、太平洋を渡り1527年フィリピンに到達した。フィリピン総督ビベロ一行の船がスペイン領メキシコへの帰路、1609年千葉県御宿沖で台風に遭遇し座礁したが、373名中317人が村民に救助された。ビベロが駿府で徳川家康に謁見した際、家康と初の通商交渉が行なわれた。外交樹立、船舶の自由航行、信教の自由等を骨子とする協定書が署名されたがスペインでは批准されなかった。反宗教革命の盟主でオランダと反目していたスペインは、オランダ人の日本追放条項を求めたが、家康は拒否した。日本、フィリピンは夫々占領の恐怖感から疑心暗鬼だった。3国通商協定が締結されていたら3国間の交流は大きく発展していたであろう。日本の鎖国時代、メキシコで日本の産品や日本人の足跡が記録されており、長崎から交流が続いていたのではないか。
ビベロ一行は翌年、三浦按針の建造した船で無事メキシコに帰国した。これを記念して、1928年千葉・御宿に「メキシコ塔(日西墨交通発祥記念碑)」が建立された。先週、メキシコ海軍の練習帆船が当地を訪問し、地元選出の森法相列席の下に歓迎式典が催された。他にも各地で多くの交流400周年の祝賀行事が予定されており皆様の参加をお願いしたい。
埴岡FEC理事長:日本とメキシコは交流400年、国交121年の歴史。年内に大統領の来日計画があり、FECも記念行事をできないか大使と相談したいと考えている。
大戸ニチレイ相談役:当社はメキシコから年間14千トンの豚肉を輸入しているが、高品質で外食チェーンに好評だ。インフルエンザ騒動時の日本の農水省の対応は実に明快で、取引先の不安も鎮まった。両国関係にも良かったと思う。インフルエンザで輸入量は減っていない。
カバーニャス大使:石破農水相が、「加熱した食肉の危険性はない」と強く明言され、不安の沈静化に役立った。
新町敏行日本航空常任顧問:当社はこの間も減便せずに成田・メキシコシティ便をずっと維持しており、今後とも有望な路線と期待している。
カバーニャス大使:昨年の訪問客数は日本からメキシコへ11万人、メキシコから日本へ3万人。世界のインフルエンザ死亡者は通常型の年50万人に対し、新型では180名と大差がある。メキシコへの旅行者も回復基調にある。
渡邊五郎森ビル特別顧問:外交官として対米交渉にはどのような矜持で臨まれたのか。
カバーニャス大使:米墨両国は歴史的に、政治、経済、文化面で密接な関係。米墨関係ほど複雑な関係はない。米国南部はメキシコの影響が大きく、メキシコの祝日(5月5日)も米全土で祝う。オバマ米大統領も「米国の景気回復はメキシコの回復抜きにはありえない」と発言した。両国の課題は、景気回復、移民対策、麻薬・組織犯罪対策の3点だ。米国の経済支援は引き続き期待できる。米国は150年以上前からメキシコの移民労働力を必要としており、毎年100万人の不法入国者がいる。メキシコで武器は作られていない。武器はすべて米国製で、麻薬需要も米国が殆ど。
田丸リケン常勤監査役:北米自由貿易協定(NAFTA)加盟後貴国の食料自給率は90%から60%へ落ちた。国民生活面の影響はどうであったか。日墨EPA締結で両国間の貿易、投資は増加したが、EPAの実効性を更に高めるための課題、要望は何か。
カバーニャス大使:メキシコは水に恵まれず農業国ではない。農業は非効率で国内消費が中心。NAFTA加盟後米国から安価な豆、とうもろこしの輸入が増加し、打撃を受けた農村から都市部へ人口が流出した。NAFTAは農村を貧しくしたとの批判もあるが、競争力ある農業の適正人口は6百万人(現在17百万人)とみられる。日本企業には、メキシコのインフラ、エネルギー、航空宇宙等新規分野のビジネス機会がある。9月に国際協力銀行と共催するセミナーで、中産階級も増加したメキシコ市場の魅力と、米国を挟まず直接日本・メキシコ関係を見る重要性について強調したい。クリーン・エネルギーの2国間協力の政府間協議も予定されており、外資参入も認められよう。
山口雅司青山学院常務理事:日本にはメキシコの歌手、映画、絵画等のファンが多い。文化・学術交流を進めたい。
カバーニャス大使:政府間協定で毎年50名の留学生交換や60件の大学間交流協定があるが、青山学院とも是非進めたい。
埴岡FEC理事長:両国交流の歴史は日米交流よりも古いが経済・人的交流はまだ少ない。一層の交流促進が必要だ。両国のEPAも画期的だが数字はもっと伸びてもよい。
カバーニャス大使:成田・メキシコシティの直行便が開設予定で、交流増大を期待したい。
(田丸周FEC常任参与・(株)リケン常勤監査役・記)