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「米国発金融危機に直面するブラジル経済と日本企業」第111回FEC国際問題懇談会を二宮康史氏を講師として開催

ブラジル 国際問題懇談会

2009年01月08日更新

ブラジルの大きなリスクは、為替変動とインフレで、魅力は豊富な資源と巨大市場

新春の国際問題懇談会としてのブラジル経済セミナーで講演する二宮康史JETRO海外調査部課長代理

新春の国際問題懇談会としてのブラジル経済セミナーで講演する二宮康史JETRO海外調査部課長代理

とき

平成21年(2009)1月8日(木) 12時〜14時

ところ

ホテルオークラ東京(昼食会を兼ねて開催)

概要

「米国発金融危機に直面するブラジル経済と日本企業」第112回FEC国際問題懇談会を二宮康史氏を講師として開催。

内容

FEC民間外交推進協会(埴岡和正理事長)は1月8日、二宮康史日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部中南米課課長代理を招き、「米国発金融危機に直面するブラジル経済と日本企業」をテーマに第111回FEC国際問題懇談会をホテルオークラ東京で開催した。懇談会には、FEC役員、法人会員ら多数が出席した。

開会に際して埴岡理事長より新年の所感が述べられた後に、「二宮講師はJETROでサンパウロ駐在経験があり、ブラジル関係の著書も多い。新進気鋭の専門家」と主催者挨拶。続いて、二宮講師より詳細な配付資料に基づき、ブラジルの経済情勢、進出日本企業動向、金融危機後のブラジル戦略等についての講演があり、講演後は出席者と一問一答の昼食懇談会が行われた。出席者からは、ブラジルの魅力、金融危機の影響、障害・課題など直近のブラジル情勢を体系的に理解できたと好評を博した。

講演要旨

ブラジル経済の魅力は、国内市場が巨大(GDP世界10位、人口2億人、ラ米カリブ市場の4割)で輸出余力の大きい資源大国の点。特に原油埋蔵量は加速度的に増加している。資源国は中東、ロシア等政治リスク大きいが、ブラジルの民主主義は安定しており政策変更も少ないのが強み。04ー08年平均成長率は4.8%と以前の低成長から一気に中成長段階へ上昇した。消費と投資が牽引力。09年は金融危機の影響から2%台前半へ減速する予測。景気過熱から中銀は、08年4月以降利上げに転換したが、その後の減速とインフレ予想の低下から1月下旬に利下げの見込み。過度なレアル高も急激に是正され05年レベル(2.2レアル台)迄低下した。金融危機後対外送金が増加し経常収支は赤字に転落。対伯直接投資も減少の見込みだが尚高水準。欧米は電話通信、サービス業向け大型民営化案件が大旨を占め、日本は製造業中心。

世界7位の自動車大国だが、金融危機後ローンの縮小から市場は急激に冷え込んでいる。電気電子産業では年末商戦は健闘したが、今後市場悪化とレアル安のコスト増が懸念される。農業は、穀物価格の下落と信用収縮により穀物生産が減少し、燃料需要減退からエタノール輸出も影響を受けよう。日伯貿易は資源、輸送機械、電気電子を中心に金額では増加しているが、中伯貿易の増加からシェアは低下した。日本の直接投資は近年、農業、鉄鋼、資源分野の大型案件が増加している。進出企業の経営上の課題、障害は、労働コスト(為替変動、給与外コスト)や税制(複雑、高率、移転価格)、インフラ不足が指摘される。

ブラジル経済は過去の教訓から、財政規律、為替変動、インフレターゲット政策の3本足で支えられ安定化した。外貨準備は対外債務並みの高水準(2千億ドル)へ増加し対外危機への耐性が高まっている。09年の経済減速は不可避だが、国内市場、消費の高級化、資源等ブラジルの魅力は不変であり、10年以降を見据えた戦略が重要だ。

懇談・質疑応答

大戸ニチレイ相談役:政府はインフラ整備とエネルギー安定供給(水、電力)に投資する姿勢はあるのか。

二宮講師:政府は07年にインフラ整備のための投資促進計画を発表したが、財源難から民間資金に依存せざるをえない。発電は8割が水力。原発は2基、発電シェアは低い。アマゾン上流の水力発電PJあるが環境影響評価段階。バイオマス発電は国内市場に売電している。

志賀ヤンマー顧問:インフレと為替の不安定、労働訴訟、未整備な法制など障害が大きく、相当数の投資をしたが7年前に全面撤退した。同じ業界の他社も撤退した。

二宮講師:インフレと為替面は好転したが、労働訴訟は昔と変わっていない。労働者保護色が強く裁判コストもかかるので企業側が折れてしまう。労働法の改革は課題だ。米独の商工会議所は外国企業と協力して移転価格税制等のロビー活動を行っている。税制は複雑で、商品流通サービス税(ICMS、州税)改正の動きがある。

北道帝人海外事業企画室長:当社の東京ドームの10倍の広さの農場が不法農民に占拠され係争中。高失業率が貧富格差を生んでいる。

二宮講師:最低賃金の引き上げや家族基金で格差対策を実施している。失業率は7%まで低下したが今後は上昇し消費が抑制されよう。

三好日本製紙グループ本社特別顧問:治安情勢はどうか。

二宮講師:日本人駐在員が増加している影響もあろうが、余り良くなっていない。

八丁地日立製作所顧問:航空機製造のエンブラエル社に注目しているが、技術開発に対する政府支援はあるのか。

二宮講師:エタノール開発には政府資金が出ているが、エンブラエル社は、欧米出身の技術者が大勢を占めており自力開発技術と自負している。

新町日本航空常任顧問:同社から10年迄に10機(400億円)購入予定。欧米の技術者多く技術力に遜色はない。他方頻繁に税率が変更されるなど税制が不透明。航空券にも課税され係争中だ。観光業の振興策はあるか。

二宮講師:負担金、手数料等様々な理由を付けて課税する。日本との移転価格税制問題は政府間交渉中で改善の方向だ。リゾート地への欧州投資が増加しているが、政府の奨励策はない。観光誘致も課題だ。

田丸リケン常勤監査役:以前モトホンダ社長から、「ベルギー、タイ、米国と比べて労働者の質は高く経営しやすい」と聞いたが、一般的評価か。

二宮講師:単独出資で1万人雇用する名声ある企業故、人材難の問題はなかろう。中間管理層に日系人を雇用できるのはBRICsでは当国のみ。

野村全日本空輸最高顧問:日本の人口減少対策としてブラジル日系人の移民を検討できないか。

小森本間獣医科医院国際部長:日系人は英語を話せるのか。

二宮講師:外務省も悩んでいる。日系社会の中心は3世、4世で日本との関係が希薄だ。むしろ在日ブラジル人を地域社会でどう育て活用するか、情報整備も含め課題だ。話せる外国語はスペイン語くらいで英語は話せない。

埴岡理事長:ブラジルでの日系人の影響力は大きいのか。

二宮講師:連邦議員に3人いるが、日系人の人口シェアは1%で発言力は低い。

川井国際石油開発帝石ユニット・コーディネーター:海底油田も有望だが日本の技術は弱い。ペトロブラスに大水深開発技術を教えてもらいながら油田を共同開発中。

鍋谷電源開発国際業務部審議役:海底油田開発コストは40ドル/B故、開発速度が停滞する懸念がある。

野村全日本空輸最高顧問:三井物産が農業事業へ大型投資した。ブラジルの食糧・農業分野へも関心をもつべきだ。

大戸ニチレイ相談役:アジアの鳥インフルエンザ問題から、ブラジルから鳥輸入が急増し当社の冷凍倉庫は満杯。気候が日本と反対故物流コストを除くと有望だ。

小澤リンナイ管理本部総務部課長:当社のブラジル製造販売拠点は米国と並び好調。労働者の質は良いか。

二宮講師:マナウスは落ちるなど地域差があるが、トヨタではトルコに次いで高い評価だ。

(田丸周FEC常任参与・(株)リケン常勤監査役・記)

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