ニャン・ベトナム副首相をお招きして第43回FECベトナム問題研究会を開催=FEC日越文化経済委員会
2010年05月21日更新
日越間の重点分野での協力関係について率直な意見交換を行う
とき
平成22年(2010)5月21日(金)8時〜9時30分
ところ
帝国ホテル東京「菊の間」
概要
平成22年5月21日(金)にニャン・ベトナム副首相をお招きして第43回FECベトナム問題研究会を開催
内容
FEC日越文化経済委員会(委員長・松澤建学校法人青山学院理事長)は5月21日、グエン・ティエン・ニャン・ベトナム社会主義共和国副首相を迎え、第43回ベトナム問題研究会・歓迎朝食会を帝国ホテル東京で開催した。ニャン副首相は、日本経済新聞社が主催する第16回国際交流会議「アジアの未来」に招かれ来日した。朝食懇談会では、これから10年のベトナムの発展には人材育成が必要不可欠。本日は人材育成について率直な意見交換をしたいと述べ、ベトナムに日本の大学をつくって欲しいとの要望が出された。FECからは、埴岡清至FEC理事長代行、松澤建学校法人青山学院理事長、田中宏株式会社クレハ取締役会長、湯下博之元駐ベトナム大使、荒木浩東京電力株式会社顧問・元会長等19名が出席し、ベトナム側はニャン副首相、ビン駐日ベトナム大使他ベトナムの各省次官等幹部9名が出席した。
本日はニャン副首相をお迎えしての朝食懇談会を開催出来、大変光栄に思う。日越関係を更に発展させるために本協会として尽力して行きたい。重ねてニャン副首相のご臨席に感謝申し上げる。
ニャン副首相とは昨年3月のハノイ訪問時に、首相府でお会いしたが、本日再会でき誠に嬉しく光栄に思う。現在、日本へのベトナム人留学生は3000人を越え、2007年から年率2ケタのペースで増加している。その要因は、ベトナムでは新たに日本語が英語やロシア語などと並ぶ「第一外国語」に位置付けられ、日本への関心が高まっていることにある。これも偏にニャン副首相のご指導によるものと敬意を表する。
私は、国作りは人作りが大切と考えており、経済分野の関係強化と併せて両国間の教育交流を通じて貴国の人材育成支援を積極的に目指している。そのためニャン副首相はじめベトナム政府要人との率直な意見交換を通じて更なる関係の深化に努めたい。
昨年に引き続き、本年7月下旬又は8月上旬に私を団長とする経済教育事情等調査団が貴国を訪問する予定。その際再会し、更なる意見交換を通じて互いの信頼関係を深めたい。
2年前に4日間訪日し今回が2回目。今回は公式訪問では無いが、国会開会中にも拘らず昨日は前原国土交通大臣と会談でき、本日は3人の閣僚との会談が予定されている。日本政府がベトナムとの関係強化を重要視している証だ。また、FECの在京大使館との定期的な経済懇談会開催に感謝申し上げる。
昨年日越学長会議をハノイで初めて開催し、双方50名の代表者が出席した。また、日本と協力してベトナム宇宙開発センター設立を目指しており、日本政府から既にODAが提供され、計画通り進めば数億ドル規模の予算になる。まずベトナム製の小型衛星を作り、気候変動による海水の上昇の観測に役立てたい。昨夜の日経主催の晩餐会に鳩山総理が出席され、5つの協力分野を提言された。その一つは、アジア諸国が衛生システム協力を進め、災害防止、環境などの情報を共有すること。また岡田外相と看護、介護師の人材育成を共同で進めることについて意見交換した。この事業を大きく育てたい。
2008年12月に日越両国間に経済協力協定(EPA)が調印され、昨年10月1日から2国間のEPAが進められている。昨日私が提案した「日本ASEANグリーン開発センター」についても日本の協力を得たい。日本は最先端の環境技術を持っており、社会管理能力も高いので、ASEAN各国への技術共有をしてほしい。
また、ベトナムに貢献度の高い企業に対して何らかの形で表彰することを考えたい。2010年第1四半期の日本経済のGDP成長率が4.9%だったことは、我々にとっても嬉しいこと。ベトナム経済のGDP成長率は6.5%の見込み。FECがベトナムとの関係強化に尽力され、私をはじめベトナム代表団を招いてくれたことに感謝申し上げる。次回はFEC代表団がベトナムを訪問した際に再会し意見交換をしたい。
蜂谷哲也さくらクリニック院長:私は、医療を通じてベトナムに貢献していきたい。副首相からもあったように、看護師、介護士を日本に招き実務を経験しながら日本の国家資格を取得する交換協定のプログラムがあるが、実務面で計画通りに行っていない。原因として、言葉の問題が一番大きい。日本の場合、外国から来た看護師、介護士は日本の国家資格を取得しなければならないが、今後それを英語又は母国語で行う案がある。それは非常に安易な考えだ。日本で医療福祉に従事するには日本語を身につけないといけない。3年前からフィリピンとインドネシアから医療福祉従事者が100名以上来日しているが、国家試験を取得したのはわずか3、4人。医療福祉従事者の人材育成に際しては、日本語教育をしっかりと行う必要がある。他方、受け入れ側の日本では、看護師、介護士の養成は専門学校と大学の看護学部が柱となっている。大学の看護学部は看護師の指導者を育成する。私の医療グループで新たに保険医療大学を設立し、看護学部を作った。10〜20%の外国人枠を設けるので、ベトナム政府として日本の専門学校や大学への留学生派遣に力を入れてほしい。今後、サクラグローバルホールディング株式会社等のFECの医療関係者が協力し、ベトナムの看護師、介護士の人材育成に尽力するのでベトナム政府の協力をお願いしたい。
先日ハノイを訪問した際、バックマイ病院を視察したが、入院ベッドが1500床〜2000床のところに3000人を収容していると聞いた。そのような状況を解決するため努力するので、ベトナム政府としても法律、制度面での助力をお願いしたい。
ニャン副首相:ベトナムの医療福祉従事者が日本の国家資格を取得するのは非常に難しい。提案いただいた留学が一番短期間での国家資格取得の道であり、少数の医療福祉指導者育成には良い方法だがコストが高い。次に既にベトナムの医療福祉従事者を日本に留学させ、日本語研修をして国家資格を取得する方法も考えられるが同じくコストが高い。一番安いのは、日本の優秀な医療指導者にベトナムで人材育成をしてもらうこと。ベトナム人を数百人留学させるより、日本の指導者が10〜20人ベトナムに来て日本の国家資格取得のため教育することを希望する。例えば最初の2年間はベトナム語で看護介護知識の勉強をし、同時に日本語を修得する。その上で、日本の指導者による日本の基準の教育を受けることは非常に効果が大きい。日本政府とよく協議し、ベトナムにある施設を利用して人材育成センターを作って欲しい。ベトナムと日本の所得格差は非常に大きいので、費用をベトナムの水準まで下げることが重要。実現可能な方法でのご協力をお願いしたい。
松澤建FEC日越文化経済委員長:只今ニャン副首相から助言いただいた内容は医療分野に限らず日越協力を進めていく上で重要なこと。我々は民間であるが政府とよく相談して進めて行きたい。
吉田允昭レコフグループ代表:ニャン副首相は外務大臣、外務次官と会談した際、看護や介護の問題等が進まないのは厚労省等各省にまたがる日本側の課題と発言されたが、すでに日本政府内で、財務省はじめ6〜7省の官僚がベトナムへの資金技術援助の連絡協議会を非公式で始めている。ベトナムに看護介護研修センターを作ることは大変良い計画なので、財務省内の連絡協議会に提案したい。日越両国が窓口を決めてスピードアップした対応を期待している。
ニャン副首相:ベトナム政府としても教育基金等を作りベトナム人の看護師、介護士の育成を支援していきたい。
鬼頭国彦(株)オーバル代表取締役:ホーチミンのロンタイン空港の建設計画があるそうだが、今後の予定について伺いたい。
ニャン副首相:ロンタイン空港は年間利用者数5000〜7000万人位の大きなものになる予定。ベトナム交通運輸省が中心に進めているが、ここ数年の世界経済金融危機の影響もあり外国のパートナーの資金集めがうまくいっていない。