第1回FEC日越経済問題等協議会(略称:日越経協)を在日ベトナム社会主義共和国大使館で開催
2010年02月02日更新
両国間の政治情勢等について互いに率直な意見を述べ合った=FEC日越文化経済委員会
とき
平成22年(2010)2月2日(火) 14時〜16時
ところ
在日ベトナム社会主義共和国大使館
概要
2月2日在日ベトナム社会主義共和国大使館にて第1回FEC日越経済問題等協議会を開催した。
内容
民間外交推進協会(FEC)日越文化経済委員会(委員長・岩下誠宏(株)ADEKA取締役名誉会長)は2月2日、在日ベトナム大使館との共催による第1回FEC日越経済問題等協議会を在日ベトナム大使館で開催した。大使館からはビン駐日大使、ハ次席代表・公使、チュン商務参事官、フィ投資担当参事官らが出席し、FECは埴岡和正常任副会長、荒木 浩東京電力(株)顧問・元会長、松澤 建(学)青山学院理事長、野村吉三郎全日本空輸(株)最高顧問、湯下博之日越文化経済委員長代行・元駐ベトナム大使、田代 圓東ソー(株)取締役相談役、森 敏光(株)みずほコーポレート銀行顧問、森元峯夫(株)エスイー代表取締役社長、米澤泰 治米澤化学(株)取締役社長、松本謙一サクラグローバルホールディング(株)代表取締役会長、蜂谷哲也さくらクリニック院長ら、FEC役員・会員のほか非会員の企業からも関係者が多数出席した。FECはベトナムと21年の交流実績を誇り、昨年は2つの調査団(経済、教育)を派遣し、チェット国家主席を表敬したほか主要閣僚と会談した。又、ズン首相(5、11月)、マイン共産党書記長(4月)の来日時にはFEC役員との懇談会を開催した。本年も、1月にキエム副首相兼外相との会談を実施し、5月には昨年に続く教育・経済調査団の派遣計画があり、極めて緊密な民間外交を推進している。
日越経済問題等協議会は、両国ビジネス交流上の様々な障害、課題について相互理解を深め解決するための場として設置され、FECと在日ベトナム大使館の共催で定期開催する予定。初回の協議会では埴岡和正FEC常任副会長が開会挨拶を行い、ビン駐日ベトナム大使、岩下誠宏(株)ADEKA取締役名誉会長の主催者挨拶の後、ベトナム投資環境について双方から報告があり、引き続き活発な意見交換が行われた。
埴岡和正FEC常任副会長:日越ビジネス交流は近年活発化しており、高速鉄道、高速道路、原発等大事業も目白押し。日本企業の進出加速に伴い、ビジネス上の誤解やトラブルも多い。率直な意見交換を通じ相互理解を深め、問題解決を図る場として本協議会を設置した。オブザーバーとして両国の官民関係者も適時お招きし、両国関係発展の一助になればと願っている。
ビン大使:両国は戦略的パートナーシップ関係にあり、昨年10月に日越EPAが発効、鳩山政権下でも日本とアジアの関係強化の中で両国関係の発展が期待される。FECとベトナム大使館が協力して本協議会を設立した。ビジネス交流の一層の発展に向けて具体的な活動をしたい。
岩下誠宏(株)ADEKA取締役名誉会長:本協議会の設置を決められた埴岡常任副会長とビン大使に感謝したい。日本とのベトナム初のEPAは異例の速さで発効し、今後の両国経済関係強化が期待される。自社の経営理念(「世界の人々と共に生きる」)に記したが、「海外展開は進出国に役立ってこそ会社の利益になる」心構えが重要だ。両国の相互発展を願っている。
湯下博之日越文化経済委員長代行・元駐ベトナム大使:ベトナムは政治が安定し、経済も好調だ。09年は5.3%成長へ回復し、10年は東南アジアで最高の成長率の見込み。首脳往来も近年頻繁で両国関係は良好だ。鳩山首相も既に、チェット国家主席、ズン首相と会談した。ハノイ首都千年の今年、ベトナムはアセアン議長国を務める。メコン開発の玄関口に位置し、対日関係も深まろう。ベトナムへの直投累計で日本は首位。投資協定(04年)、日越EPA(09年)と投資環境も改善が進んでいる。政府間では、高速鉄道、高速道路、ハイテクパークが3大PJ。裾野産業育成を官民で推進中。先月来日されたキエム副首相はFEC役員に対し、「日本は特別の国、文化、教育も含め日本への関心は高い」と述べた。ベトナムとは感性が合い、聴く耳を持ち日本に学ぶ姿勢が強い。岩下委員長の言われたとおり、共存共栄で向き合う事業の成功率は高い。
フィ投資担当参事官:(スライドで投資環境を説明)人口87百万人、65%が35歳以下。今年の成長率目標は7%。ベトナムが2015年に参入する、アセアン・中国FTAは19億人の世界最大のFTA市場となる。ベトナムは日本のODAの最大受取国、日越貿易は中国に次ぐ第2位、対越累積投資額は第4位でシェア10%。日越パートナーシップ協定、共同イニシアチブ(第3段階)と投資環境整備を進めた。ベトナムの有望産品は、縫製品、靴、木材、水産品、工作機械、原油等。投資歓迎分野は、輸送インフラ、エネルギー、金融、保険、通信、ハイテク、バイオ、建設資材、種苗、教育等。
A氏(食品):ベトナムで原料を輸入し加工食品を輸出しているが、中国に比べて通関事務が不透明で時間もコストもかかる。どこに照会したらよいか。
チュン商務参事官:各税関にコスト開示規定がある。現地の税関やハノイの関税局への照会を当大使館が仲介する。
B氏(機械):05年以降ベトナム南部から理不尽な労働争議が発生し、相応な賃上げを実施している当社も3年連続ストに見舞われた。安定した労使関係構築のために政府の支援が欲しい。
埴岡和正FEC常任副会長:FECも当時来日した政府要人に、改善要望を率直に申し入れた。
フィ投資担当参事官:政府が仲裁し収拾する場合もあるが、最低賃金等の労働法制の順守が重要だ。組合との労働協約を、労使が正しく理解し運用できればストは減ろう。
湯下博之元駐ベトナム大使:最低賃金制が引き上げられた時に、以前から十分な給料を支給している日本企業で争議が発生した例がある。違法ストへの厳格対処を要望する声は多い。
B氏(機械):組合と賃上げ合意した後でも、半数以上の会社で争議が発生する。
C氏(商社):養殖エビに抗生物質や注射針の混入事例があり、食品衛生法違反の比率は中国以上だ。以前ベトナム大使館に照会要請したが返事がない。徹底解明と善処を要望する。
ハ次席代表・公使:水産物養殖業者への指導等再発防止に努めている。3回違反したら対日輸出禁止となる。09年の違反は71件に減った。厚労省との連携も進み、違反事例は即時通報を受ける体制となった。3月には日本から調査団も派遣されるので、事態の改善を期待している。
埴岡和正FEC常任副会長:中小企業の裾野産業育成とも関連するが、食品衛生の意識向上が必要で、教育も重要だ。
松澤 建(学)青山学院理事長:両国経済・文化交流には、中小企業や教育の交流が必要。日本語教育の促進、知的財産権問題等もベトナムの発展に重要で、意見交換が大切だ。
埴岡和正FEC常任副会長:本日は双方で率直な意見交換できた。次回は4月開催を予定。5月にFEC調査団の派遣を計画しており、現在団員を組成中。
ビン大使:両国関係は良好だが障壁も尚多い。直面する諸問題について意見交換し有益であった。感謝する。キエム副首相の指示もあり、本日の協議内容を副首相へ報告し、法制整備と教育指導を進め解決に努めたい。次回は、教育、知財問題も含め皆様の関心事項につき意見交換したい。5月のFEC調査団の訪越を歓迎する。
(田丸 周FEC常任参与・油研工業(株)常勤監査役・記)