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「米国新政権発足と今後の日米関係」をテーマに第16回FEC米国問題研究会を開催=日米文化経済委員会

アメリカ合衆国 日米文化経済委員会

2009年01月30日更新

講師にマーク・E・ナッパー在日米国大使館政治部次席を招く。流暢な日本語での講演にFEC役員らと活発な質疑応答も行われた。

講師のマーク・E・ナッパー在日米国大使館政治部次席

講師のマーク・E・ナッパー在日米国大使館政治部次席

第16回FEC米国問題研究会開催風景=ホテルオークラ東京本館

第16回FEC米国問題研究会開催風景=ホテルオークラ東京本館

とき

平成21年(2009)01月30日(木) 12時〜14時

ところ

ホテルオークラ東京

概要

「米国新政権発足と今後の日米関係」をテーマに第16回FEC米国問題研究会を開催=日米文化経済委員会

内容

テーマ

「米国新政権発足と今後の日米関係」

内 容

FEC日米文化経済委員会(委員長・徳川恒孝(財)徳川記念財団理事長)は1月30日、マーク・E・ナッパー在日米国大使館政治部次席を招き、第16回FEC米国問題研究会・昼食会をホテルオークラ東京で開催した。オバマ新政権発足直後の今次研究会には、FEC役員、法人会員の関心の高さから多数が出席した。

開会に際して埴岡FEC理事長より、「ナッパー次席は、立派なアカデミック・キャリアと日本、アジア各地の駐在経験が豊富な敏腕の外交官。日本の外交上は難敵。本日は日米関係強化に向けて、率直な意見交換を期待したい」と講師を紹介した。渡邊五郎FEC日米文化経済委員会副委員長・森ビル(株)特別顧問は、「ナッパー次席は日米、アジアに深い造詣をお持ちの有能な外交官。アジアを見据えた日米関係について、広く深く核心をついた見解を伺いたい」と主催者挨拶。続いて、ナッパー次席より「米国新政権発足と今後の日米関係」をテーマに、アジア情勢、オバマ政権の役割、日本への期待などの基調講話があり、講話後、中東、アフガン情勢、安全保障、米国経済など広範な問題について、オフ・レコにて出席者と一問一答の活発な議論がかわされた。

講演要旨

世界人口の55%を占めるアジアでは普遍的価値を多くの人が希求している。米日両国が果たす役割は前政権と同様に重要。1日2ドル以下で暮らす人の7割がアジア、内7億人が1ドル以下だ。大国同士衝突する懸念のある唯一の地域だ。中印は経済成長の恩恵を受け花形プレーヤーとなった。中国は中流階級層を3億人から10億人へ目指す。日米共に中国経済の好調と拡大を望んでおり、中国の政治力も高まろう。しかし中国は今後、地方からの就労を充たすために、毎年豪州一国並みの1千万人の新規雇用の創出が必要。

アジアの安定支持と諸問題を平和解決する価値観の育成が日米の長期戦略。日米関係が秩序構築を支援する。日中両国が同時に大国であった歴史はなく、現状は相互に疑念を抱いている。米国は日中の緊張緩和に有益な役割を果たせる。米国の安全保障は日本と密接不可分で強固な日米同盟がアジアの平和をもたらす。日米同盟は友好国との連携を更に強化する時期にある。日米豪の定期戦略会合はその良い例であり、中国に脅威を与えないという役割も果たしている。日本はアメリカにとってアジアにおける要石だ。英EU関係が深まっても英米関係が持続するように、日米両国は「スマート・パワー」として関係を深化し続けよう。

日本は米国の農産物、航空機の最大輸出先。日本からの保険料収入は500億ドル超。日本の旅行者、留学生も多い。米国トヨタの雇用はTI、シスコより多い。日米の生産額は世界の40%を占め雇用創出効果は大きい。戦後、日本がアメリカに示した友情に感謝すべし。

米国は日本の国際的発言力増大を望み、国連安保理常任理事国入りを応援する。実際の活動も重要で日本はインド洋の補給活動に貢献した。ソマリア沖の海賊対策、アフガン復興に関する支援の継続を今後とも求められるであろう。国際社会とアジアの秩序再定義の過程で、日米間が混乱してはならない。日米は今後も良きパートナーとして威厳と尊厳を持ち、一緒に目的地へ到達しなければならない。

米国は、北朝鮮の侵略抑止と六者協議による非核化達成のため、米韓同盟の重要性を維持する。北朝鮮問題はまだ07年合意の第2段階。第3段階の北の核の完全無力化、解体後、南北朝鮮間の正常化構築を目指す。北朝鮮のテロ支援国家指定解除は非核化への前進を期待したもので、重い経済制裁は尚継続中だ。拉致問題を含め日本と連携して取り組む。

懇談・質疑応答

渡邊日米文化経済委員会副委員長:イラクから撤兵し危険地域のアフガンへ派兵する計画だが、アフガンの兵士をあぶり出す「太陽政策」はとれないのか。米国には説得する力がないのか。

ナッパー次席:社会安定には兵力だけでなく復興が必要とイラク戦争から学んだ。アフガンでは増兵と同時にインフラ復興事業に注力する。

伊藤JR貨物(株)代表取締役会長:日本も恩恵受けた米国の消費経済が崩れた。国民感情、日本への期待はどうか。米労組や経営者は危機に直面しても既得権を離さない。

ナッパー次席:日本へはアフガン協力、金融問題解決策に期待している。雇用情勢の悪化と労組の弱体化から、今回保護主義は増大しないと専門家は指摘している。

岩下(株)ADEKA名誉会長:安保理常任理事国入りの損得は何か。戦勝国の拒否権ある限り日本が入っても利点は少ないのではないか。

ナッパー次席:日米で世界経済の4割を占める。米国は日本の常任理事国入りを支持する。日独などを対象とする国連憲章の旧敵国条項の改定も必要だ。

埴岡FEC理事長:未曾有の経済危機の米国は自力で再建できない。日本はどんな対策が可能か足元を固め、米国と協調して行動すべし。集団的自衛権は日本人自身の問題。政治家の決断が必要。

松尾国際石油開発帝石(株)代表取締役会長:米人に聞いた米国民の期待は、経済対策が圧倒的で環境対策はずっと低い。外交では中東問題が優先されるのか。

ナッパー次席:環境問題への関心は若者に高いが高齢者は低い。経済再建と環境対策を連携させる政策だ。前政権は中東問題を完全に解決することはできなかった、中東和平は外交の重要課題。ミッチェル特使役割が注目されている。世論調査では、国民は経済再建には2、3年かかると冷静な見方だ。オバマに早期解決を期待していない。

中嶋(株)日油代表取締役会長:アフガン増派、ガザ紛争には好戦派を利する裏のシナリオがありそうだが?

ナッパー次席:9.11はアフガンから派生した。紛争地域の無秩序化阻止が重要だ。日本はまだ「米国の中国重視・ジャパンパッシング」観測を心配しているか。

森元(株)エスイー代表取締役会長:中国の潜水艦の動きや台湾併合、基地化を懸念する。

渡邊日米文化経済委員会副委員長:日米財界人会議で共同宣言直前に米国側に反対された経緯がある。日本人の対米悪感情を取り除くために必要だ。

田丸周FEC常任参与:大規模な景気対策で日米中の財政難は深刻化する。3カ国で軍縮を理念として提言する好機だ。在日米軍の駐留経費削減等、冷戦終結時のような「平和の配当」も期待できる。

ナッパー次席:軍縮は将来的に必要だが、アジア・太平洋地域の平和と安定への脅威は今だ存在しているのが現実だ。

森元(株)エスイー代表取締役会長:米国は日本の防衛力を期待できるのか。我が国は外圧がないと動かない国だが。

ナッパー次席:憲法の制約下で、医療や復興事業への日本の役割分担は可能。国際貢献となる。

谷野元駐中国大使:東アジアは北朝鮮を除けば平穏故、東アジアへ目を向ける余裕はないのではないか。「日本パッシング」観測記事は、メディアが自信のなさを煽り国民が同調する形だ。日米の欲求不満解消のために首脳会談の早期開催を望む。米国は外交より経済再建が緊急課題。日本への防衛費負担要求を覚悟し、日本の考えを率直に米国に伝えるべきだ。

新町(株)日本航空常任顧問:米国は既得権(成田発着枠27%)を手放さないので、日米航空協定の見直し・自由化が進まない。幅広い観点での交渉を期待する。

閉会にあたり、埴岡FEC理事長より在日米国大使館幹部とFEC役員との懇談会や研究会の定期開催が提案され、ナッパー次席は「大変良い機会だ。日米問題を広く意見交換でき、自分の勉強になった」と述べ、賛同した。

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