公的資金の注入でも世界恐慌は止まらない。株価の底も当面は見えない。米国強欲資本主義が自爆した
2008年11月13日更新
日米文化経済委員会=ニューヨーク在住の神谷秀樹ロバーツ・ミタニLLC代表招き第15回FEC米国問題研究会
とき
平成20年(2008)11月13日(木) 12時〜14時
ところ
ホテルオークラ東京「スターライト」
概要
神谷秀樹ロバーツ・ミタニLLC代表招き第15回FEC米国問題研究会を開催
内容
ウォール街からの警告。「2009年の米国経済と世界への影響」
住友銀行、ゴールドマン・サックスを経て1992年に現在のロバーツ・ミタニLLCを創業。26年間ニューヨークに在住の神谷秀樹同社代表を招き第15回米国問題研究会を開催。米国政府が7000億ドルの救済策を発表したにもかかわらず世界恐慌への道は止まらないのか、世界同時不況の根源、崩壊してしまった米国経済の厳しい現状を、現場にあって身をもって実感している神谷氏から話を聞き、満席の会場から矢継ぎ早の質問が出席の各企業経営者から出て熱気を帯びた質疑応答の場となった。
冒頭に埴岡和正FEC理事長が開会あいさつ。続いて日米経済委員会副委員長の渡邊五郎元三井化学会長・米国三井物産社長が、本日はそのテーマと講師が良いので会場が満席で活気があると主催者あいさつ。続いてテーマに基づいて神谷講師が荒廃した米国の実情をウォール街の自爆によって10兆ドルの時価総額が喪失。一方毎週30億ドルの軍事費が支出され、年間7000億ドルの貿易赤字の債務大国、財政赤字は年間5千億ドルで、2009年は1兆億ドルになるとその現状を切実に話し、節操無き、借金と浪費の果てが、米国社会の格差が拡大し分裂した社会となり、今や世界唯一の超大国の影も無く、ドルが唯一の基軸通貨ではない。その原因は、サブプライムローンを証券化し大量に生産し世界中にばら撒き、巨万の富を得ようとした強欲な米国資本主義が自爆したことにある。今年のノーベル経済学賞を受賞のポール・クルーグマン教授(プリンストン大学)の「生きている間に大恐慌に似たことが起きるとは思わなかった」の記者会見での言葉のとおり、恐慌の流れは止まらない。政府と国民も大借金で首がまわらないので、個人消費が米国GDPの70%を占めるというような浪費をあり得ない、住宅の在庫は100万戸以上、自動車産業はビッグスリーの破綻状態が物語っている。従って対米輸出で稼いでいた日本企業への影響は大きく、デカップリング論も誤りで、中国・インドなども大不況となる、と語った。最後に米国への再生の道はあるかについては、健全な民主主義と技術革新がベースにあれば相当の歳月を要すが国力の回復の可能性があると信じている。現に今日多くの米国人は、これまでの生活のあり方を率直に大反省しており、浪費することはなく貯金に向かう。それも再建への第一歩だと述べた。
質疑応答では、共鳴するところは大半だが一点本格的な恐怖は本当に起きるのか、株価はどこまで下がるのか? 金本位制に戻すことは? このような時の日本政府の役割は何か? 共和党の小さな政府が結果として大きな政府になってしまった要因は? 米国を含めた新しい世界経済体制を確立するためのシナリオは何か? 耐久消費材の時代は終わるのか? 中東に依存しないエネルギー政策・新エネルギー源の開発は? 大不況の中にある米国々民の意識は変化しているのか? 時価会計制度は? 米国の格付会社そのものの実態と格付は?などの質問が出された。
オバマ新政権の政策の柱は何か?との問いに、ブッシュ政権の8年で11%の人の所得は伸びているが、90%の人々の所得は伸びていないという現状を踏まえての税制改革、低所得層の子ども達の大学進学への奨学金支援などの教育改革、国民皆保険などの社会福祉改革、新しいエネルギー源の技術開発なども柱で、何よりも史上初めての黒人大統領を選出し米国々民が変化を求め変わることが出来るということを選挙結果を通じて感じていることが米国の大転換期の到来で、米国の民主主義は強いという証だと説明した。
定刻を前にしての渡邊副委員長の総括では、日本はやはり憲法も改正し自分の国は自分で守るという国づくりを今後真剣に進め、米国はじめ世界から本当に頼りになる国だと受けとめられるような普通の国にならない限りは日本の株価は常にニューヨーク市場に連動して上下する。
[ゲスト]
神谷秀樹 ロバーツ・ミタニLCC創業者兼マネージング・ディレクター
大橋 進 ロバーツ・ミタニ・アドバイザーズLCCマネージング・ディレクター
[FEC役員・会員]
渡邊 五郎 FEC日米文化経済副委員長、森ビル(株)特別顧問・元三井化学(株)会長
野村吉三郎 全日本空輸(株)最高顧問・元会長
福澤文士郎 東亜合成(株)取締役相談役・前会長
生田 正治 (株)商船三井相談役・前日本郵政公社総裁
三好 孝彦 (株)日本製紙グループ本社特別顧問・前会長
田中 宏 (株)クレハ取締役会長
山田 洋暉 クラレ(株)監査役
名倉三喜男 興和不動産(株)取締役社長
渡邊 隆治 (株)ニフコ特別顧問・前社長
野中 洋一 丸善石油化学(株)取締役社長
新町 敏行 (株)日本航空常任顧問・前会長
白川 進 東京電力(株)取締役副社長
大戸 武元 (株)ニチレイ相談役・前会長
本間 良輔 ケネディクス(株)代表取締役会長
米澤 泰治 米澤化学(株)代表取締役社長
神山 茂 (株)ジャステック代表取締役社長
岡野 徹 旭有機材工業(株)相談役・前会長
志賀 哲夫 ヤンマー(株)顧問・前専務取締役
水沼 正剛 電源開発(株)常務執行役員
川田 隆司 (株)ボルテックスセイグン常務取締役
木村 丈剛 旭海運(株)代表取締役社長
北道 佳久 帝人(株)海外事業企画室長
鈴木 章二 (株)エスイー管理本部付担当部長
佐橋 信子 東京LFEC(女性会員)幹事
[FEC本部役員等]
埴岡 和正 民間外交推進協会(FEC)理事長
前田 貴俊 民間外交推進協会(FEC)企画事業部次長