第9回FEC日露経済問題等協議会(略称・日露経協)を在日ロシア連邦大使館で開催
2009年10月15日更新
両国間の政治情勢について厳しい発言もあり互いに率直な意見を述べる場となった
とき
平成21年(2009)10月15日(木) 15時〜17時
ところ
在日ロシア連邦大使館
概要
第9回FEC日露経済問題等協議会を在日ロシア連邦大使館で開催
内容
内藤明人リンナイ(株)会長、埴岡和正FEC理事長、荒木浩東京電力(株)顧問、瀨在幸安元日本大学総長、都甲岳洋元駐ロシア大使、野村吉三郎全日本空輸(株)最高顧問、松本健一サクラグローバルホールディング(株)会長、森敏光元駐カザフスタン大使、田丸周FEC常任参与、水沼正剛電源開発(株)取締役、馬蹄和久阪和興業(株)取締役、武居信男蘭日貿易連盟日本代表、金森邦夫国際石油開発帝石(株)専務執行役員、中川原俊輔(株)三井物産戦略研究所ロシア・CISビジネス推進室長はじめFEC法人会員の企業代表者30人
民間外交推進協会(FEC)日露文化経済委員会(委員長・内藤明人リンナイ(株)取締役会長)は10月15日、在日ロシア大使館と共催による第9回日露経済問題等協議会(略称・日露経協)を在日ロシア大使館で開催した。大使館からはオヴェチコ駐日ロシア公使、リャボフ参事官・総領事、ジョストキー政務参事官、フェシュン文化担当一等書記官らが出席し、FECは埴岡和正理事長、内藤明人リンナイ(株)取締役会長、都甲岳洋(株)三井物産戦略研究所特別顧問・元駐ロシア大使、瀨在幸安元日本大学総長、荒木浩東京電力(株)顧問、野村吉三郎全日本空輸(株)最高顧問、松本健一サクラグローバルホールディング(株)代表取締役会長、森敏光(株)みずほコーポレート銀行顧問・元駐カザフスタン大使ら、FEC役員・会員が多数出席した。FECはロシアと19年の交流実績を誇っているが、両国間の交流促進の方策を協議する場として、2006年12月に在日ロシア大使館と日露経協を設置し、過去8回開催された。日本側が抱える日露ビジネス上の障害、課題について、本音の意見交換により相互の理解不足を浮き彫りにし、改善要望や問題解決策が毎回率直に述べられ、双方の出席者から好評を得ている。昨年来日しFEC主催の日露フォーラム及びFEC役員との懇談会に出席したラブロフ外相や今春のナルィシュキン大統領府長官も、こうしたFECの日露交流活動に謝意を述べられた。今回も、7月の前回の協議内容を踏まえ、活発な議論が交された。
開会に際してFEC日露文化経済委員長の内藤明人リンナイ(株)取締役会長が、「両国間には政治、経済各分野に課題があるが、人的交流等による相互理解の深化と、本協議会のような場で当事者間が率直な意見交換を行うことが大切だ。11月30日のナルィシュキン大統領府長官来日時にFEC日露フォーラムが開催決定された」と主催者挨拶の後、意見交換に入った。尚、今次日露経協もオフレコで開催され、下記の懇談内容はオフレコ部分を削除した。
オヴェチコ駐日ロシア公使:日露政治問題について、鳩山新政権下で新しい展開に期待している。首相はロシア事情通で、祖父は56年の日ソ共同宣言の署名者。ロシアは日本国民を歓迎し、ベールイ駐日ロシア大使は最初に首相を祝福した。国連総会時(9/23)の日露首脳会談で、両国関係の今後につき話されており、麻生首相時代に冷え込んだ関係のリセットが期待される。前回も言及したが、日本の衆参両院で議決された北特法改正は敵対的で平和条約に向けて影を落としたと考えている。麻生首相の外交方針の「自由と繁栄の弧」もロシアは淡々と受け止めた。ウクライナのオレンジ革命やグルジア支持の考えはロシアに反する。
両国関係は弱体化したとの見方が増大している。領土問題について、半世紀の間日本の総ての政治家が、「四島の早期返還」を繰り返した。鈴木宗男議員は講演で、「鳩山首相は、半年以内に領土問題の解決に道筋をつけたいと考えている」との認識を示したが、その道筋は明確でない。政治決断とビジネス交流の同時進行で解決すべき。ビジネス先行でもよい。待っているだけでは前進しない。04年に解決を図ったプーチン大統領に対し、小泉首相は「四島全島返還」の立場を変えなかった。状況打開を真剣に考えていない。中国との国境を画定したが、日ロ間では雰囲気が醸成されていない。7月の世論調査で89%が日本への北方領土譲渡に反対しており、選挙民の意向は無視できない。9月のメドベージェフ・鳩山会談で、メ大統領は政治、経済他あらゆる分野の協力が重要と述べ、鳩山首相は現世代での領土問題の解決と平和条約締結を希望した。アジア太平洋地域での協力、北朝鮮核問題も話された。次回は11月のAPEC首脳会議時の会談を予定。岡田外相の年末年始の訪ロも計画中。冷却期を過ぎ日ロ間の高レベルの交流が頻繁になった。11月のナルィシュキン大統領府長官の訪日時にFEC日露フォーラムでは詳しい話が聞ける。
埴岡和正FEC理事長:政治問題への厳しい表現であったが、ロシアは鳩山政権に期待している。
森敏光(株)みずほコーポレート銀行顧問:ソ連時代に戻ったような言い方だ。米ロ関係が好転する中で、鳩山政権の日ロ関係改善も期待されているが、ロシア側が心配だ。日本の外交方針は国民支持を背景にしており、麻生首相の外交が日ロ関係を減退させたとの発言は容認できない。日本政府の領土問題に対する方針は一貫している。日ロ関係が悪化していた時代を想起させる発言はビジネス界の雰囲気を阻害する。日ロ関係を前進させる発言が欲しい。
オヴェチコ公使:森氏に同感だ。今年前半の両国関係の悪化を新政権で繰り返すべきでない。政治摩擦がなければビジネス機会が生まれる。今年は政治関係の悪化から日ロ貿易が停滞した。
森敏光(株)みずほコーポレート銀行顧問:世界経済危機の影響で貿易が停滞し、ロシアの諸問題(銀行制度未整備、投資不足等)が露呈した。麻生政権のロシア政策とは全く無関係だ。
内藤明人リンナイ(株)取締役会長:シベリアの豊富な天然ガスを日露共同で開発すれば、双方にメリット大きい。四島返還も可能になるのではないか。
オヴェチコ公使:シベリア極東の資源開発はロシアの力量不足から外国資本に協力を仰ぐ。領土問題は感情的にならず、良いことを積みかさねていくことが重要。
埴岡和正FEC理事長:江田参院議長と会ったラブロフ外相も「感情的になってはいけない」と云った。ロシア側にも同じことが言える。FECは江田議長の帰国後公邸で、訪ロ時の話を伺う予定。日本のロシア政策は国民の声。今日は公使らしからぬ発言で、モスクワの公式見解を棒読みしている感じでソ連時代を思い出す。
水沼正剛電源開発(株)取締役:5月のプーチン首相来日を契機に、当社、三井物産、国営電力の3社でウラジオストクに風力発電所建設を準備中。12年のウラジオストクAPECに合わせ、完成させる計画。燃料省次官に長期電力買取保証と許認可を要請中。風力資源を確認し来夏までに投資可能か判断する。当社のロシア向け初投資となる。火力発電、エネルギー効率改善事業もやりたいので、大使館の支援をお願いする。
オヴェチコ公使:前面協力する。
馬蹄和久阪和興業(株)取締役:丸太輸出税引き上げは延期されたが、来年からはどうなるのか。借入金利は20%と高く不況が深刻。プーチン首相の失敗ではないかと云われているが。
オヴェチコ公使:経済危機故、80%への大幅引き上げはなく、25〜30%となる見通しだ。
松本健一サクラダグローバルホールディング(株)代表取締役会長:医療協力で極東に派遣した調査団が、「中央で管理されていた予算は今後地方が自主的に使える」と聞いたが本当か。
オヴェチコ公使:地方分権の方向に沿った動きで好ましいと思う。08年度予算から医療設備購入の権限は地方に委譲された。
都甲岳洋(株)三井物産戦略研究所特別顧問:東欧ミサイル防衛問題で米ロ関係に進展があり、日ロ関係改善の好機だ。ロシアは一般的に親日的だが、議会に反日勢力がいる。日本側の8割がソ連時代の思い出をもつ。国内世論の障害を意図的に解決する必要がある。日本でもロシアの良い所を強調したい。三井物産は極東を含めロシアビジネスを積極的に推進している。
オヴェチコ公使:ラブロフ外相と大使館は共に、鳩山政権下の日ロ関係改善の好機を失わないよう、全力を尽くす所存。
武居信男蘭日貿易連盟日本代表:ロシアの自動車市場は金融危機後半減してしまった。14年まで回復しないとの見通しがあるが。
オヴェチコ公使:良い情報はない。国営自動車企業のリストラを進めており、自立回復は無理で外資との連携が必要。06年以降進出した日本の自動車メーカーの生産は8月に前年比1%増へ回復した。更なる投資を歓迎する。
瀨在幸安元日本大学総長:鳩山政権の新鮮な間に関係改善のための国民世論を形成すべきだ。トヨタのロシア進出発表時に、ロシア国民は「相当な先行投資だ」と冷笑していた。
森敏光(株)みずほコーポレート銀行顧問:日ロ査証交渉の行方を伺いたい。
リャボフ参事官・総領事:4年間協議を続けているが来年には協定文が完成する。業務査証のみが対象で3年まで期間が延長される。
田丸 周FEC常任参与:ロシアの原発計画へ日本の電力、機器メーカーの協力意欲は強い。原発計画と日ロ原子力協定批准の見通しはどうか。
オヴェチコ公使:ソ連崩壊後、ロシアの原発建設は1基だけ。今後毎年1基建設する計画だ。ロスアトムから専門家や建設労働者が離れており、ロシア原子力産業の権威は低下した。東芝と業務協定を結び、第三国での原発計画作りを行っている。ロシアでも東芝中心に進むか。公開入札制故日本企業の参入は可能だ。原子力協定批准時期はロシアで来年中、日本で来年末か。
中川原俊輔(株)三井物産戦略研究所ロシアCISビジネス推進室長:9月の日露首脳会談時に、何故ロシアは鳩山首相の訪ロを招請しなかったのか。
オヴェチコ公使:次回11月のシンガポールでの会談時に発表されよう。大統領、国民は鳩山首相の訪ロを歓迎しよう。早急に実現に向けて頑張り、両国関係が悪化しないよう努力する。
宮脇宗嗣スカラキャピタルマネジメント(株)取締役会長:領土問題は双方一枚岩にならないと解決しない。日本側が世論をまとめるべきだ。NHKTVで「坂の上の雲」が放映されるが、ロシアを逆なでする懸念がある。
埴岡和正FEC理事長:日露戦争のドラマにロシアは一々怒るまい。また歴史の史実は事実である。気にする必要はなかろう。政治の歩み寄り必要だが、FECの北方領土問題の立場は4島返還であり微動だにしない。一方日本企業に最後に残された大市場をどう希望の市場に育てるかロシア側も同様であり関心は高い。本日は率直な意見交換ができ有意義な第9回の日露経協であった。11月30日にナルィシュキン大統領府長官の再来日にあわせ、FEC日露フォーラムを計画し
ている。次回は12月に忘年会を兼ねて在日ロシア大使館で第10回の日露経協を開催する。
(田丸 周FEC常任参与・油研工業(株)常勤監査役・記)