第8回FEC日露経済問題等協議会(略称・日露経協)を在日ロシア連邦大使館で内藤委員長出席の下に開催
2009年07月16日更新
オヴェチコ駐日ロシア臨時代理大使を囲んで日露ビジネス交流上の諸課題について率直かつ活発な意見交換を行なう
とき
平成21年(2009)7月16日(木) 14時半〜16時半
ところ
在日ロシア連邦大使館会議室
概要
第8回FEC日露経済問題等協議会(日露経協)を在日ロシア連邦大使館で開催
内容
民間外交推進協会(FEC)の日露文化経済委員会(委員長・内藤明人リンナイ(株)取締役会長)は7月16日、在日ロシア大使館と共催による第8回日露経済問題等協議会(略称:日露経協)を在日ロシア大使館で開催した。大使館からはオヴェチコ駐日臨時代理大使兼公使が出席し、FECは埴岡和正理事長、同委員長の内藤明人リンナイ(株)取締役会長、都甲岳洋FEC日露文化経済委員長代理・元駐ロシア大使、岩下誠宏(株)ADEKA取締役名誉会長、新町敏行(株)日本航空常任顧問、松本健一サクラダグローバルホールディング(株)代表取締役会長、小林哲也(株)帝国ホテル代表取締役社長、小野寺優(株)ニフコ代表取締役社長、森敏光元駐カザフスタン大使ら、FEC役員・会員が多数出席した。FECはロシアと19年の交流実績を誇っているが、両国間の交流促進の方策を協議する場として、2006年12月に在日ロシア大使館と本協議会を設置し、過去7回開催された。日本側が抱える日露ビジネス上の障害、課題について、本音の意見交換により相互の理解不足を浮き彫りにし、改善要望や問題解決策が毎回率直に述べられ、双方の出席者から好評を得ている。先般来日しFEC主催の日露フォーラム・講演会及びFEC役員との懇談会に出席したラブロフ外相やナルィシュキン大統領府長官ら要人も、こうしたFECの日露交流活動に謝意を述べられた。今回も、昨年11月の前回の協議内容や最近の日露首脳会談結果を踏まえ、活発な議論が交された。
開会に際してFEC日露文化経済委員長の内藤明人リンナイ(株)取締役会長が、「プーチン首相来日時には、原子力協定の締結や極東・東シベリア開発等、エネルギー分野の日露協力強化が確認された。両国間の貿易は急速に拡大し、進出企業数は99年比70倍と増加している。一連の首脳会談では領土問題の進展がなく残念だが、この時に当たり相互理解の深化には経済、文化・人的交流の促進が重要。本日の協議会も一助になればと願っている」と主催者挨拶の後、懇談に入った。尚、今次日露経協もオフレコで開催され、下記の懇談内容はオフレコ部分を削除した。
オヴェチコ駐日臨時代理大使:G8ラクイラ・サミットの日露首脳会談では大きな変化はなかったが、両国の相互理解が深まり満足だ。2003年に採択された「日露行動計画」(小泉・プーチン両首脳の共同声明)に基づき、両国の協力関係は濃密且つ豊富になった。経済関係の発展とともに政府間で平和条約締結を検討する機構を作ってきた。08年の日露貿易は296億ドル、日本の対露投資は47億ドル(18位)。本年2月から日本向けサハリンLNG輸出が開始され、更に、イルクーツクの原油探鉱調査に日本の参加が決定した。将来同地域で生産される原油は、現在、建設中の太平洋パイプラインが太平洋岸まで延伸される場合には、日本を含むアジア太平洋地域の需要年8千万トンのうちロシアから年6千万トン供給される見通しだ。石油ターミナル建設への日本の参加も実務的に検討されており、日本のエネルギー供給源の多様化、調達力の強化に貢献する。日本海の密漁対策も日露協力で活発化したい。
領土問題の進展はなかったが、ロシア指導部は解決に前向きで決して棚上げにする気はない。北東アジアの安全保障と安定のためにも日露関係の改善を期待している。メドベージェフ・麻生会談では「合意された原則に基づき解決策を探る」ことで一致したが、56年の日露共同声明が両国の唯一の解決策の法的基盤だ。その他注目されなかったが、北朝鮮問題の連携や、日米露3カ国の安全保障専門家会議の開催は重要な合意点だった。
埴岡和正理事長:ロシアにおける外国の優先度は旧ソ連邦の国々が一番であり、日本の位置は低いと思う。成田・モスクワ間のJAL便も週3便だけというのが両国の交流の現実を物語っている。しかし、10年前と対比すると両国の経済・文化交流は活発化している。ロシア側は資源エネルギー分野の協定締結に満足したと思う。今後、人的、文化交流が促進され両国民の相互理解がより深まれば北方領土問題も解決への道筋がつくのではないか。
森敏光元駐カザフスタン大使:北方四島を「我が国固有の領土」と衆参両院で立法化された北特法に明記したことにロシア側が反発したが、新しいことではない。ロシア側は指導部に、「日本が新しい動きをした」と伝えたのではないか。麻生首相も、ロシア側に平和条約問題について具体的な進展を図る用意がないのであれば、アジア太平洋地域におけるパートナーにはならないと改めて強調された。日本のビジネス面への悪影響を懸念する。
オヴェチコ駐日臨時代理大使:このたびの北特法改正は日本の内政変化を反映したのではないかとの疑念から、信頼関係を損ねた。経済危機克服が当面するロシアの最大の課題の時にロシア国民の感情に触れることは避けるべきだった。
都甲岳洋元駐ロシア大使:ロシアは両国の主張の差を判っていない。主権を認めれば平和条約は必要ない。メ大統領は日露共同声明に戻ってしまったが、過去の交渉で何度も経験している。ロシアが日本の立場を国内で十分説明しないと進まない。首脳間ですら誤解がある。民間が真剣に極東PJに取り組んでいる時、ロシア側が雰囲気をこわそうとしている。中露間は3年間静かに交渉し領土問題を昨年解決した。
島津嘉彦住友商事(株)顧問:近年、日本企業の対露進出が活発化し日露ビジネスの次元が高まった。連結決算・納税制度の早期導入、長期の業務査証の実現を要望したい。ところで、ロシアからみて日本企業の進出はどの程度歓迎されているのか。
オヴェチコ駐日臨時代理大使:連結決算導入は全く同意する。査証簡素化交渉は続けている。日本の警察が厳しく査証撤廃は困難だ。ロシアは当大使館で毎年2千人の日本人にマルチビザを発行しているが、日本のロシア人向け発行は僅か16件(07年)だ。日本の投資は歓迎されている。昨年の政府間交渉で極東・東シベリアPJのリスト(187件)を作成、今回提示された。
森敏光元駐カザフスタン大使:日本では不美人リストと酷評。外務省もショックを受けている。ロシアの地域発展省と地方自治体との権限争いもあり不幸だ。美人リストを揃えてほしい。
中川原俊輔(株)三井物産戦略研究所ロシア・CISビジネス推進室長:4月に来日のポーランド民営化担当相の民営化の英文プレゼンとその資料は素晴しかった。ロシアもPJ毎にウエッブで全世界に英文発信すべし。
都甲岳洋元駐ロシア大使:日本の対露輸出の1/4を占める中古車の輸入関税引き上げは極東に大打撃だ。ロシアは極東地域開発の気持ちはあるのか。地域特性を考慮した政策が欲しい。
オヴェチコ駐日臨時代理大使:中古車より新車、外車より国産車を重視した政策で、関税収入を新車購入の補助金に充当している。極東には、原発建設、アルミ工場、自動車KD工場などの計画がある。
岩下誠宏(株)ADEKA取締役名誉会長:経済交流が進展してもまだ低水準だ。領土返還の日本の経済メリットは200億円しかない。日本人の多くは「返還が先」の認識だ。北朝鮮の貨物検査に中国、ロシアが難色を示した。日本とは立場が違うのか。
オヴェチコ駐日臨時代理大使:ロシア、中国とも日本の平和憲法遵守を支持し、北朝鮮の非核化を5カ国で検討している。ロシアは日本と立場は同じだ。
米澤泰治(株)米澤化学代表取締役社長:旧ソ連のCIS各国との紛争が日本との北方領土問題交渉の障害となっているのか。
オヴェチコ駐日臨時代理大使:日本との領土画定問題の存在をゴルバチョフ大統領が初めて認めた。ウクライナは言語、民族、歴史も同じで領土問題はない。ただバルト3国との関係は複雑だ。
島津嘉彦住友商事(株)顧問:前回の第7回日露経協においては課題になっているが、丸太輸出税の引上げは1年延期されたが、来年1月以降はどうなるのか。
オヴェチコ駐日臨時代理大使:ロシアのWTO加盟問題にも関係し、欧州からの圧力もある。国内では段階的引上げ説が強い。
秋本博夫三菱商事(株)CIS総括:国内の合板はロシア材抜きのスペックに変えており、ロシア材輸入需要は減ったとプーチン首相に伝えられた。労働許可証取得に1年半かかる。日本人の犯罪率は低い筈なので弾力的運用を期待する。
オヴェチコ駐日臨時代理大使:極東の日本人も含め犯罪が多発しており、ケースバイケースで対応される。犯罪を国で区別はしない。査証などは相互主義で協議されるので、業界から日本政府へ要望されたい。
埴岡和正理事長:本日は率直な意見交換ができ有意義な協議会であった。次回の第9回日露経協は9月下旬に開催予定。ロシア側の合意を得て11月中旬のナルィシュキン大統領府長官の再来日にあわせで同長官を招きFEC日露フォーラムを計画している。
本日はベールイ駐日大使の一時帰国中でその留守の任に当るオヴェチコ代理大使は何かと公務多忙の中での本日の日露経協への出席と会議準備に感謝したい。
(田丸 周FEC常任参与・油研工業(株)常勤監査役・記)
(注) | 閉会後にオヴェチコ代理大使から埴岡理事長に対し「本日出席のFEC役員、会員の皆さんにお土産としてロシアサーカスの入場券を準備していたが、担当者が何かの手違いで忘れて申し訳ない」との断りがあった。 |