ラブロフ・ロシア連邦外務大臣を招き日本で初めてのFEC日露フォーラムを開催。
2008年11月05日更新
日露文化経済委員会=北方領土返還は日本国民の悲願と強調!
とき
平成20年(2008)11月5日(水) 14時半〜15時40分
ところ
ホテルオークラ東京
概要
ラブロフ・ロシア連邦外務大臣を招き日本で初めての日露フォーラムを開催。
内容
FEC日露文化経済委員会(委員長・内藤明人リンナイ(株)取締役会長)は11月5日、在日ロシア大使館と共催により、セルゲイ・ラブロフ外相を招きホテルオークラ東京で日露フォーラムを開催した。FECは、日露両国間のビジネス交流上の課題等についてロシア大使館と定期的に協議、懇談の場としての日露経済問題等協議会(日露経協)を催している。ロシアの外相ら要人が日本で公開講演するのは初めての試みであり、FEC法人会員各社代表のほか、ベールイ駐日ロシア大使、ボロダフキン・ロシア外務次官、ガルージン太平洋アジア局長をはじめデア駐日ドイツ大使ら在京45カ国の大使、政府・外務省関係者、報道関係者等が400人程が出席した。
ラブロフ外相は、4日に日露外交の出発地函館に到着し旧領事館開設150周年記念行事に出席し、5日午前の中曽根外相会談と本フォーラム出席後、慌しく羽田から特別機で帰国という超過密日程であった。開会に際して、内藤日露文化経済委員長が、「両国間には未解決の課題もあるが、隣人が交流を深めることは大切。FECは経済、文化交流を通じて両国関係の強化を目指し、私もFEC経済調査団の団長として3度訪露した。ラブロフ外相のご出席を心から歓迎するとともに、ロシアの要人と日本国民の対話フォーラムの実現を第一歩として、両国民の相互理解の一層の深化を祈念したい」と主催者挨拶。続いて、埴岡理事長は、「FECは新生ロシアと18年間の交流を通じて、北方領土返還は日本国民の悲願と常に訴えてきた(場内から大きな拍手)。トルストイの云う「民の声は天の声」であります。ラブロフ外相の功績は枚挙に暇がないが、人柄は正直且つ誠意のある方。人を見る眼力も確かで男が惚れる人物」とラブロフ外相を紹介した。ラブロフ外相は「日露関係の展望」を演題に、国際情勢、アジア太平洋地域とロシア、日露関係等について率直な所感を語り、講演後はFEC会員等関係者と活発な質疑応答が行われた。
日露関係に関心ある多数の参加者が結集され嬉しい。内藤明人日露委員長以下FEC幹部の皆様に御礼申し上げたい。金融危機は両国に波及しており健全化に協力することが必要。コーカサスの危機は国際的安全保障の平和的調整という課題を提起した。多極的世界でロシアの役割は強化され、メドベーチェフ大統領の外交方針も承認された。ロシア、欧州はアジア太平洋地域の経済統合プロセスに吸引されよう。2012年ウラジオストックで安全保障と経済発展をテーマにAPECサミットが開催予定。日本の自動車メーカーのロシア欧州地域進出はアジア全体に恩恵を及ぼそう。11月15日にワシントンの金融サミットで金融危機対策が討議されるが、サルコジ仏大統領は「資本主義のペレストロイカを」と訴えた。
アジア太平洋地域の安全保障と経済発展を協議する機構として、上海協力機構、APEC、アセアン+3等があり、健全な民主化と最適な安全保障体制の構築を模索している。メドベーチェフ大統領の提唱した欧州の新安全保障体制に欧州は好意的だが、アジアは異なる。朝鮮半島の非核化、領土問題、分離主義等アジア全体で懸念がある。エネルギー・食料問題もある。軍事同盟で解決するのは過去の話で外交で解決すべきだ。陣営強化の思考も尚あるが、新しい境界線で自らを阻害する事になる。米国の世界的ミサイル防衛(MD)計画の一部となるこの地域でのMD配備計画をロシアは注視する。
地域の共通の価値観による結束は、民主主義と人権の尊重如何だ。偏った解釈やイデオロギー対立の再発を避け、平等な相互主義が必要だ。ASEAN地域フォーラムは安全保障強化に重要で、上海協力機構は経済、文化、教育等の分野での協力を進めており、閉じられた組織ではない。 安全保障は他国の犠牲で自国を守るべきではない。同一原則で透明性と武力不行使を維持すべきと、76年のバリ条約や02年の南海関係国行動宣言にも明記された。ロシアは地域の伝統的パートナーであるが、中国、インド、ベトナムとの関係も大切。露米関係も国際情勢安定化に影響力を持つ。
露日関係は特異だが進展している。軍事対立がなく普遍的原則の下、両国の共通課題も多く、真の友好・互恵関係が外交面に反映されている。露日貿易は今年はすでに300億ドルを超えた。政治対話も積極的で、03年の「露日行動計画」が07年にシベリア極東地域開発へと弾みがつき、今年「13年までの極東・ザバイカル開発計画」を採択した。露日関係は質的に向上しよう。 ロシアは受入れ可能な平和条約を本気で検討する気がある。本年は、日露修好通商条約150周年と日露首脳のモスクワ宣言10周年にあたり、両国にとって記念すべき年。
小林日露文化経済委員:米国の新大統領に期待できるものと日本の果たせる役割は何か。
ラブロフ外相:「相手を犠牲にしてはいけない」という安全保障の原則は国連憲章やNATOに規定されているが、4月のNATOサミットでは保証されなかった。欧州の集団的安全保障を提唱したいが、その道は簡単ではない。
田中クレハ会長:エネルギー問題の政治化は避けて欲しい。サハリン〜計画の懸念払拭のため、例えばガスプロムを民営化する計画はあるか。
ラブロフ外相:エネルギーを外交手段に使った例はない。ロシアに差別的内容であった90年代のサハリン〜の契約を変更したが契約当事者は満足している。対日経済協力でも差別的例はない。不満あれば、政府・民間ベースで伝えて欲しい。中曽根外相との会談でも、ハイテク、宇宙、原子力等広範な分野での両国の協力関係発展に合意した。
宮脇FEC理事:露米両首脳間で世界の核軍縮問題を話し合ってはどうか。
ラブロフ外相:グルジア紛争へのロシアの介入は、グルジア政権が国際法に違反して武力介入したからだ。ロシアの行動を理解して欲しい。核不拡散問題はずっと露米交渉の課題。戦略兵器削減条約が来年失効するので対話継続を提起しており4月の露米首脳会談で、核弾頭の在庫保存が合意された。2010年のNPT(核兵器不拡散条約)会議に向けて米国の責務の認識と必要な行動を期待する。また2国間対話プロセスへの他国の参加を希望する。
原日露文化経済副委員長・(株)大和証券グループ本社最高顧問:国際情勢、日露関係について明確で示唆に富む貴重な講演に感謝する。年明けにはサハリン II 計画が稼動しロシアが一層近い存在となる。懸案課題についても交流を高めて建設的対話が可能と述べられた。アジア太平洋地域は世界で最も発展する日本の得意地域。持続的発展により、両国間の課題解決が期待できよう。
内藤日露委員長、原同副委員長らFEC役員とロシア外相、駐日大使、外務次官ら一行との会談を催しストレート・トークの場とし今後の交流促進に向けての協力を確認した
FECは日露フォーラム終了後、ホテル内の別室にてラブロフ外相らの出席のもとに約30分間の会談の場を設けた。ロシア側は外相、ベールイ駐日大使、ボロダフキン外務次官、ガルージン同太平洋アジア局長ら10人で、 FECは内藤、原正副日露委員長、埴岡理事長、田中宏、岩下誠宏両副会長、森敏光、白川進日露委員ら役員10人が出席し互いに本音の意見交換をした。