「ロシア民主主義と大統領選」をテーマに大いに談論風発の場(ヴァシーリー・ゴロヴニンイタルタス通信東京支局長)
2007年04月13日更新
第75回FECロシア問題研究会 FEC日露文化経済委員会
とき
平成19年(2007) 4月13日(金) 12時〜
ところ
ANAインターコンチネンタルホテル 3階「雲海」
概要
イタルタス通信東京支局長を招き第75回ロシア問題研究会。
内容
「ロシア民主主義と大統領選の行方」
FEC日露文化経済委員会(委員長内藤明人リンナイ(株)会長)は4月13日、ANAインターコンチネンタルホテルにヴァシーリー・ゴロヴニンイタルタス通信東京支局長を迎えて第75回ロシア問題研究会を開催した。FEC役員・会員を中心に多数が出席した。開会に際して、埴岡副理事長より、「ゴロヴニン支局長は日本勤務20年の日本通。プーチン政権下のロシアは本当に民主国家なのか、オフレコで率直にお伺いしたい」と主催者挨拶。ゴロヴニン講師は「ロシア民主主義と大統領選」をテーマに、ロシアの現況、国民の関心、大統領選の行方など幅広く講演し、講演後出席者と活発な議論がかわされた。
国民は90年代の経済混乱で疲弊しており、政治・思想の不信感が強い。「社会主義、資本主義と色々経験したが生活はよくならない」という気持ちだ。プーチン人気の背景は、エリツィンと違ってウオッカを飲まない、分り易く語る、家族想いのスポーツマン、KGB出身故信頼感ある等だ。国民は強い政府を求めており、プーチンの安定性は高く評価されている。強圧的なプーチン政権で民主主義が終わったとはいえない。
昨年は7%成長と経済は好調だ。消費、建設ブームだが経済基盤は依然弱い。輸出の6割以上は石油・ガスに依存し大きな価格変動は打撃となる。道路インフラは貧弱で銀行制度への信頼も低い。国民の西側、特に米国への反発、不信感も強い。ゴルバチョフ時代、ペレストロイカで西側と共に繁栄するという甘い期待が砕かれ、米国の観光ビザ制限を、「もう一つの鉄のカーテンだ」と批判する。ロシアは東欧から軍事撤退したが、NATO軍は勢力を拡大し米軍も増強されている。彼らはロシアのチェチェン介入を批判するがイラクはどうなのか。
「政治・選挙への非介入」がプーチンのビジネス・ルールで、巨大民間ビジネスへの弾圧により大企業の政治野心を抑えている。彼の潜在的ライバルとみられたホドルコフスキー・ユーコス社長も追放された。リベラル派や共産党を含め、野党が弱くライバル不在の状態だ。
有力次期大統領候補は、イワノフ副首相とメドヴェージェフ第一副首相だ。イワノフはKGB出身で高齢者に人気があり、メドヴェージェフは活動的で若者に人気がある。どちらもプーチンより弱い大統領になろうが、民主主義発展には良い過程だ。旧ソ連時代とは異なる圧力を受けているメディアも報道の自由の好機を窺っている状態だ。
当面、経済は好調だが、今後、株価・不動産価格のバブル破裂や石油価格下落があると、有権者の意識や安定的な政権基盤にも影響しよう。