イラン大統領選挙後に初めてのイラン国会要人を招いての第44回FEC中東問題研究会を開催
2009年07月03日更新
ボルジェルディ・イラン国家安全保障外交委員長ら国会議員一行とFEC役員との間で大いに談論風発の場となる
とき
平成21年(2009)7月3日(金) 8時〜9時半
ところ
ホテルオークラ東京「ケンジントンテラス」
概要
イラン大統領選挙後に初めてのイラン要人を招いての第44回FEC中東問題研究会開催
内容
中東最大の国のイランと日本との国交80周年に際しイランの要人ボルジェルディ・イラン国家安全保障外交委員長と国会議員一行7名とアラグチ駐日大使らを招き歓迎朝食会を兼ねて開催した。世界が注目しているイラン大統領選後の国内情勢についても懇談の場で質問が集中するなど極めて活発な意見交換が行われた。
FEC日・中東文化経済委員会(委員長・小長啓一AOCホールディングス(株)参与)は7月3日、アラーエッディン・ボルジェルディ・イラン国家安全保障外交委員長を招き第44回FEC中東問題研究会・朝食会をホテルオークラ東京で開催した。イランは6月12日の大統領選挙の開票結果を巡る大きな混乱が世界に衝撃を与えた。ボルジェルディ・イラン国家安全保障外交委員長を団長とする国会議員団8名は、大統領選後初めての要人来日で、FEC朝食会により一行の公式日程が開始された。イラン側はアラグチ駐日イラン大使、ジャーファリ同参事官が同席した。FEC側は埴岡和正理事長、野村吉三郎全日本空輸(株)最高顧問、松澤健青山学院理事長、須藤隆也元駐イラン大使、小林哲也帝国ホテル(株)社長らFEC役員等が出席した。
開会に際して小長啓一FEC日・中東文化経済委員長より、「日本はイランの第2位の貿易相手国でイランは日本の石油の安定供給源、と夫々重要な国。日本はイランの原子力開発問題と、大統領選後の混乱を懸念しており、核問題の平和的解決と混乱の早期収束を願っている。率直な意見交換が真の友情を生む。本日の朝食会の実りある結果を期待する」と主催者挨拶。ボルジェルディ委員長が、大統領選の混乱や核開発問題、米国との対話の可能性等についての見解を述べた後、FEC側出席者と率直な質疑が交わされ、盛況の研究会となった。
中山太郎日本イラン議連会長の招聘で来日したが、FEC朝食会がその日程のスタートとなり嬉しい。お招き感謝する。小長氏のご指摘の、核問題、大統領選後の情勢につき話したい。天野大使の次期国際原子力機関(IAEA)事務局長就任を祝うとともに、イランと日本の友好関係が堅固となることを確信する。世界情勢はその国の人から聞くべきだ。イランの大統領選挙の投票率は85%と高く、政府と国民の間に強い絆がある。大統領が終身制や世襲の中東他国は欧米の代弁者であり、欧米から非難されない。大統領選前に騒乱はなかった。若者はテレビ報道で煽られる改革派候補者の当選を確信するようになった。選挙は透明な中で実施され、再集計結果も同じだった。西側メディアの報道が混乱を招いた。抗議デモを治安部隊が阻止するのは全世界共通で、フランスの暴動や日本の要人来日時に対する警備体制と同じだ。民主主義への懸念はない。国会は開かれており議員の発言も自由だ。訪日団には改革派のトラービ議員も参加している。熟慮された中曽根外相談話を評価する。選挙後のプロセスは進み、騒乱も終息に向かっている。安心してイラン情勢を見て欲しい。
イランは核不拡散条約(NPT)を締結し、原子力平和利用の権利をもつ。核兵器製造や核拡散に反対だ。「核兵器のない中東」を最初に表明した。唯一の被爆国日本は世界の核兵器に沈黙してはならない。イランも化学兵器の被害国で、毎年NGO団体が広島を訪問している。今後天野次期IAEA事務局長の下で核廃絶が進むことを期待したい。イスラエルは200以上の核弾頭を持つが世界で非難されず、イスラエルがイランを非難するのは不公平だ。イスラエルは核査察を容認していない。天野氏に是非イスラエルの核施設を視察してほしい。イランの原子力開発は着実に進み6千機以上の遠心分離機が稼動中だ。40年前から米国製の5メガワットの原子炉を持っているが寿命切れだ。西側の非人道的経済制裁から医療施設の建設が困難となっている。自力で原発建設と医薬品の開発を進めている。イランンはIAEAのすべての規約を遵守し、今後とも査察を受け入れる。またIAEAは、「イランの核開発は平和利用から逸脱していない」と報告した。「日本は核兵器製造国になるかもしれない」と発言した日本の政治家がいるが、イランには、「国防用に核兵器保有」を主張する政治家は一人もいない。核は無効という認識が強い。
埴岡和正理事長:民主主義の利点はタブーがないこと。イラン、日本に共通するが、アングロ・アメリカンが世界の民主主義というのはいかがかと思う。大統領選後の情報は英語が中心で、イランの実態は不明であったが、本日はその実情を率直に述べていただく場としたい。
野村吉三郎全日本空輸(株)最高顧問:80年の友好関係の更なる発展には人の往来を増加させるべきだ。両国とも歴史遺産が多く、観光は平和へのパスポート。観光客増加には、インフラ整備と治安維持が重要。イラン航空とも協力するが、アラグチ大使やボルジェルディ委員長のご支援をお願いしたい。
埴岡和正理事長:アラグチ大使よりFEC経済調査団のイラン派遣の要請も再々ある。
松澤健青山学院理事長:「国作りは人作り、人作りは国作り」と云われ、教育の重要性を強調したい。学生交流を推進し、両国関係の更なる発展を願っている。
須藤隆也元駐イラン大使:イランはエジプト、サウジより民主主義が進んでいる。従来から選挙は民主的に実施され国民は結果に満足している。今回に限り混乱しイランのイメージが崩されたことが残念だ。今後の信頼回復を期待する。核の平和利用の信頼を国際社会から得るのに日本は40年もかかった。イランは核査察を完全にクリアしていない。天野大使は中立的で非政治人間だ。信頼を得られよう努力されたい。
ボルジェルディ委員長:世界的経済危機で観光も含め多くの改革努力が減退した。日本企業に関心が高く多くの企業を誘致したい。イランは中東の中でも治安は良く、現在でもドイツ等欧州の観光客が多い。イラン国会としても、FEC調査団の訪問を歓迎したい。在日イラン留学生は300人と少ない。学術交流も進めたい。ナノテク、遺伝子分野の業績が高く、糖尿病等の医薬品開発も有名だ。千葉大との医薬の共同研究も進めている。投票結果まで予測がつかないことが最大の民主主義の証だ。日本は信頼醸成に40年かかったが、この間ウラン濃縮活動を停止しなかった。イランは濃縮活動を2年半止めたが、信頼獲得に長期間かかるかもしれない。天野大使には、米国一国主義的立場をとらないよう、伝えてほしい。
埴岡和正理事長:IAEAはイスラエルにもはっきり勧告すべきとの意見は同感だ。FECはイスラエルの要人にも中東和平を願う日本人として率直に意見を言っている。
小長啓一AOCホールディングス(株)参与:我々の懸念に対し、率直な見解をいただき感謝する。米国・イラン関係では、オバマ大統領の米国との対話の実現を世界は待望している。
ボルジェルディ委員長:バイデン米副大統領が特使時代に提示した交渉案を様々な角度で検討中だ。イラン革命前後の米国の態度にイラン国民は不快感をもっており、米国は多くの信頼を失った。米国は過去の悪行を反省し行動を改めるべきだ。最高指導者ハメネイ師も、「米国が行動を変えれば我々も行動を変える」とハッキリと言っている。
エフテハーリ議員:国会の教育研究委員会一員として、女性、家族問題に関心がある。学生交流を是非進めたい。(一行の中の唯一の女性議員)
モフセニーサーニー議員:革命後は日本との関係発展に展望があり、イラン人の日本に対する見方は肯定的だ。先端技術分野の共同PJへの日本の参加を期待する。
閉会にあたり埴岡理事長より、「日本では近く総選挙が予定されている。日本の政治、外交政策にも少しは変化があろう。イランにとっても絶好の機会ともいえる」と挨拶。小長委員長とボルジェルディ委員長は互いに記念品を交換し、懇談会を終えた。
(田丸 周FEC常任参与・油研工業(株)常勤監査役・記)