十市勉(財)日本エネルギー経済研究所専務理事を招き「高騰する原油価格とその行方」をテーマに第33回FEC中東問題研究会を開催。
2008年02月14日更新
FEC日中東文化経済委員会
とき
平成20年(2008)2月14日(木) 11時45分〜13時45分
ところ
ホテルオークラ東京・本館
概要
十市勉日本エネルギー経済研究所専務理事を招き第33回FEC中東問題研究会を開催。
内容
「高騰する原油価格とその行方」
FEC日・中東文化経済委員会(委員長・小長啓一AOCホールディングス(株)取締役相談役)は2月14日、十市勉日本エネルギー経済研究所専務理事を招き第33回FEC中東問題研究会をホテルオークラ東京で開催した。
開会に際して、日・中東文化経済委員長の小長啓一AOCホールディングス(株)取締役相談役が、「十市氏は、国際舞台を含め縦横の活躍をされているエネルギー問題の第一人者で、実務的、学術的観点からの講話を期待したい」と主催者挨拶。十市講師より、「高騰する原油価格とその行方」をテーマに、原油価格の展望、代替エネルギー事情などについて、資料に基づき詳細な講演があった。研究会にはFEC役員・会員が多数参加し、講演後、原油高対策、原子力発電など広範な問題について活発な議論がかわされた。十市講師からは懇切丁寧な説明があり有意義な研究会であった。
昨年の原油価格は50〜99ドルで変動し史上最高値を更新したが、今年も大幅な乱高が続き年平均80ドル前後の予想だ。過去の石油価格高騰は供給ショックが主因であったが、今回は需要ショックの面が強い。日米欧は石油依存を低下させているが、需要の6割が輸送用と石化原料用で燃料転換が置きにくい。中国、インドなどの新興国では高成長と価格抑制策から需要が増加傾向にある。
他方、供給面も制約が強まっている。非OPECの生産はピークアウトし、旧ソ連はやや鈍化、OPECも微妙に生産調整している。ベネズエラ、ロシア、中東の国家管理色が強まり、資材価格急騰や技術者確保難から新規の油田開発が遅れている。米国は30年以上リファイナリーの新設がなく、精製設備不足だ。イラクの政治混乱、イラク核問題、ナイジェリアの部族紛争など地政学リスクも高まっている。
こうした供給不安要因が増える中、原油先物市場には年金基金やヘッジファンドが大量に流入し原油価格を押し上げた。先物取引量は原油生産量の6倍と巨額に上り、8年物は90ドル前後で取引されている。
原油価格は12年周期で変動している。今後の価格は、原油開発コストの上昇、産油国の価格支持政策から、底値は50〜60ドル位で2010年まで高価格局面が予想される。日本の対応は、省エネ・代替エネルギー技術開発とその普及促進により、原油高と温暖化対策を一体的に取組むことだ。
都甲元駐露大使:天然ガスの価格動向は。石油の可採年限の40年後にも航空機燃料は使用可能か。 |
十市講師:米国では原油換算50ドル。日本の引取りは長期契約で原油換算20ドル程度か。最終的利用は航空機、船舶に特定されよう。 |
小長委員長:サウジ、クウェートでも「石油価格は50〜100ドルの間で激動しよう」との見方。ロシアの生産能力はどの位か。産油国の予算で石油価格の前提はどうか。 |
十市講師:ロシアの産油能力は1000万b/d位。今後北極圏、サハリン開発を計画中。カスピ海周辺の埋蔵量は北海(800万b/d)以下か。 |
谷野元駐中大使:投機マネーの規制は国際的に議論されないのか。 |
十市講師:ヘッジファンド規制についてはG8で議論されたが情報開示義務くらいだ。備蓄で投機を牽制できるが、ブッシュは在庫を市場操作に使うのは反対の立場。民主党へ政権が変われば可能性があるかもしれない。需要の実態も数ヶ月前のデータしか把握できない。 |
都甲元駐露大使:核融合の実現可能性はあるか。 |
十市講師:高速増殖炉の実用化が2050年と予想され、核融合は更に先で実現性はむずかしい。 |
埴岡副理事長:日本は柏崎地震後止められている、原油が高騰している中で官民が一体となって東電の原発の稼動再開を急ぐべきではないか。住民対策は原発を重視するフィンランドに学んではどうか。 |
野村全日空最高顧問:日本は抜本的エネルギー政策が不在で、住民への説得が不十分だ。上坂冬子氏の原子力に関する本は分り易く良書だ。経産省は国民への原発教育をもっと推進すべきだ。 |
十市講師:夏には7号機の安全確認が終わり、住民の同意が得られれば運転再開しよう。電力自由化・民営化の中で欧米は原発を別枠にしているが、日本は民間で原発リスクを負っている。フィンランドも原子力立国の姿勢あるが議会対策も必要のようだ。 |
渡邊森ビル顧問:急激な経済成長のインドのエネルギー政策はどうか。 |
十市講師:国営石油会社が中東、アフリカ、サハリンに権益を持ち、中国と組んでシリアに投資している。原子力にも注力中。 |
岩下ADEKA名誉会長:日本の原発技術は劣っているのではないか。原発依存40%のフランスで事故はない。バイオ燃料は食糧危機とコンフリクトがある。 |
十市講師:フランスは国家戦略で原子力に取組んでいるが日本はバラバラだ。 |
田丸リケン常勤監査役:産消共存のために、日本主導で産油国の政府系ファンドを代替エネルギー開発に向けられないか。 |
十市講師:原子力などの「ポスト石油プロジェクト」にサウジ、UAEは関心あるが、温暖化対策にも取組んでおり、今後大きな軌道修正の可能性もある。 |
武藤商船三井取締役:石炭、オイルサンドの開発は今後石油の価格抑制効果となるのか。 |
十市講師:カナダでオイルサンド開発が進んでいるが、採算面で商業生産に難点がある。石炭や、プラグイン・ハブリッド車の方が抑制効果ある。 |
渡邊ニフコ社長:有機化合物の開発は進まず、石化原料用の石油需要は続く見通しだが。 |
十市講師:石化原料はコストも高いので石油を使用続けよう。 |
志賀ヤンマー専務取締役:現在5%のバイオ燃料の使用可能比率は上昇するか。 |
十市講師:EUは2020年10%目標と高い計画であるが、現実的か不明。 |
岡野旭有機材工業会長:太陽光発電の可能性はどうか。 |
十市講師:発電コストは家庭用電気のKW当り20円に対して60円と高く、稼働率は12%と低い。温暖化対策から国の補助が復活すれば推進力になろう。風力発電の方が経済性高いが景観の問題がある。温暖化対策として、世界のCO2を半減、日本は7〜8割削減を公約とするならば国民の合意を得て原発の発電比率引上げが必要だ。国の政策は「2030年30〜40%あるいは以上」とあいまいだ。ウランの可採年数は50年あり高速増殖炉で回収すれば問題ない。 |
都甲元駐露大使:日本の省エネ技術の優位性はどうか。 |
十市講師:産業別のエネルギー効率では、欧州は日本に近く、米国は低い。中国は3割近く日本より低い。 |
打越大和総研常務執行役員:都市ガス業者の経営悪化から供給不安はないのか。 |
十市講師:確かに半分は赤字経営で原料入手困難が続こう。夏場の需要次第だ。 |
野村全日空最高顧問・前会長:Jパワーなど電力会社への法的な外資規制はあるのか。 |
十市講師:外為法のみだ。欧州はレシプロ原則だ。日本もルールが必要か。 |