第14回FEC中東問題研究会を開催(8月31日)
2006年08月31日更新
「中東エネルギー事情と日本の関係」...最首公司日本アラブ協会理事を招き
とき
2006年08月31日(木)
概要
第11回、第12回、第13回、第14回FEC中東問題研究会。
内容
FEC日中東文化経済委員会(委員長・小長啓一AOCホールディングス(株)相談役)は8月31日、最首公司日本アラブ協会理事を招き第12回FEC中東問題研究会を東京・全日空ホテルで開催した。
開会に際して、日中東文化経済委員長代行の片倉邦雄元駐イラク、エジプト大使が、「原油高の源流には地政学的要素が大きい。最首先生はベテランのエネルギー・ジャーナリストで中東情勢を内側からみることのできる人」と主催者挨拶。最首公司日本アラブ協会理事より、「中東のエネルギー事情と日本との関係」をテーマに、エネルギー資源、宗教事情、日本の役割などについて率直な見解が述べられた。研究会にはFEC役員・会員が多数参加し、講演後活発な議論が交わされた。
最首公司氏を迎えて第19回中東問題研究会=東京全日空ホテルで |
米政府は原油の実質価格を200ドル/バレル以上と見ている。名目価格(70ドル/バレル)に安全保障費として、イラク戦費(160ドル/バレル相当)を加算した概念だ。ブッシュ大統領は06年の一般教書で、25年までに中東石油輸入依存度を75%から25%へ削減し、原子力とバイオマスを柱にするという、「脱石油」を宣言した。
石油・天然ガスの埋蔵量はイスラム圏に偏在しコストも安い。キリスト教圏の埋蔵量は少なくコスト高だ。また、キリスト教の「政教分離、未来期待」に対して、イスラム教は「政教一致、過去理想(イスラム原理主義)」だ。イスラム体制は19世紀に西欧が侵略、植民地化された。大戦後イスラム圏のナショナリスト、スカルノ、ナセル、シャー、アラファトらが独立運動を主導し政権を獲得したが、中東ではイスラエルと戦うたびに国軍が敗れ、和平協定締結に至る。20世紀の戦争は朝鮮戦争、タラ戦争を除き石油争奪戦であった。石油の公正な配分があったら戦争は回避されたと思う。ロシア、中国はイラク油田の利権をイラク開戦前に獲得していたが、米英は取り損ない強硬策をとった。
こうした中で、イスラエルと果敢に戦うハマス(パレスチナ)、ヒズボラ(レバノン)らの民兵への共感、支援が増えている。ヒズボラに対する国連の武装解除決議をアラブ大衆は認めないのではないか。レバノン国軍にヒズボラが入る懸念もあり、サウジ政府も急遽レバノン支援に軌道修正した。
中東の震源地パレスチナ、イスラエル、ヨルダンは水不足問題を抱えている。日本の役割として、「死海発電・淡水化プロジェクト」を提言したい。海水を淡水化し、海面差(400m)を利用した水力発電計画だ。淡水化にはEU、日本の太陽発電技術や脱塩技術が使える。
21世紀後半は原子力の時代になろう。米ロは核エネルギーの覇権獲得に動き出している。日本がエネルギー自給率(4%)を上げるには、原子力発電比率の引き上げが不可欠で、再処理事業が国際管理化される前に核燃料サイクルを確立する必要がある。日本には純粋プルトニウムの製造能力があり、自給率を高めるまで憲法改正すべきでなかろう。
最首 原油高の行方は、先物市場がリスク次第で大きく変動する。先物市場の存在意義を再考すべきではないか。
佐竹 石油需給はバランスしているが、地政学要因があり価格の先行きは不透明だ。イラン制裁あれば一層の高騰もあろう。米国に石油先物市場があり、国内製油所の事故が即座に国際価格へ波及する。
上原 イスラム・スンニ派とシーア派の勢力関係はいかに。
最首 イランは9割シーア派、イラクは拮抗しているがクルド族も入りもめている。シーア派はバハレーン、サウジ、クウエートなど産油地帯にも多い。
片倉 シーア派主導のイラク政権とハマス、ヒズボラが反米・イスラエルで共同戦線を組むと厄介だ。
最首 欧米も危険視している。ハマスの先にはムスリム同朋団(エジプト)がいる。サウジでは宗派対立をなくすべく、イスラム圏統一の小学校教科書作り構想がある。
田丸 イスラエル・ヒズボラ戦闘で、イスラエルの不戦神話が崩れた。イスラエルの反撃の懸念はないか?
最首 最右翼のエタニエフが政権をとれば強硬策にでる可能性もあるが、米国はイスラエルの戦法を批判しており、国際世論次第か。
渡邊 サウジのロイヤル・ファミリーをアラブの人はどう見ているか。
片倉 サウード王家は中部の小勢力部族出身だが結束は固い。
最首 部族間対立をイスラム教で牽制しており、反政府行動は反イスラム行為として罰せられる。サウード家は石油メジャーよりもブッシュ大統領と緊密な関係だ。
(田丸周FEC常任参与・(株)リケン常勤監査役による司会進行と記事)
第13回FEC中東問題研究会(5月20日)
元駐日エジプト大使のワヒブ・アルミ=アウィーエジプト外交評議会理事・国会議員の来日に際してFECは5月29日午後、駐日エジプト大使公邸でFEC副会長の武藤高義カルピス(株)会長、埴岡FEC副理事長らは、アウィー元大使、バドル駐日エジプト大使と両国の経済、文化交流の進め方について協議した。元大使はエジプトの大手企業の顧問も兼ねており同社と日本企業との業務提携について進めたいとの意向を述べた。
近年、エジプトは国営企業の民営化が強力に進み、かつての官70%、民間30%の経済が今日では民間70%、官30%と変貌し、力強い経済発展を続けている。同国へは米国企業の投資が活発に展開されている。エジプトはこの好景気を受けて日本企業の投資・貿易促進を大きな柱としている。
武藤会長(左から2人目)と面談のバドル大使(左から3人目)=カルピス本社 |
5月30日、埴岡FEC副理事長は東京・恵比寿のカルピス(株)本社にアウィー元大使とバドル駐日大使を案内し、同社の武藤会長ら役員、幹部とのビジネス交流の可能性についての意見交換の場を設けた。 |
第11回FEC中東問題研究会(4月13日)
FEC中東文化経済委員会は4月13日昼、来日のガブル・エジプト国際フォーラム会長ら一行とバドル駐日エジプト大使を招き東京全日空ホテルで両国関係強化のための意見交換した。懇談ではガブル会長から中東情勢やエジプトの諸情勢について詳しい説明があり、続いて委員長の小長啓一AOCホールディングス(株)相談役、FEC副会長の内藤明人リンナイ(株)会長、武藤高義カルピス(株)会長ら経済人と片倉邦男同委員長代行・元駐エジプト大使が両氏らと本音の意見を述べあった。
右の2人目がガブル会長、左が小長FEC日中東委員長 |
第11回FEC中東問題研究会としての経済懇談会は埴岡FEC副理事長の進行により進められ、日本語と英語を混ぜての懇談となり、予定閉会時間を超過しての熱込った内容となった。(東京全日空ホテル3階・雲海「特別室」にて) |
FECに対しエジプト国際フォーラムとエジプト外交評議会から提携申し入れが
FEC(民間外交推進協会)日中東文化経済委員会に対しこのほど、エジプトの国際フォーラムと外交評議会から業務提携の締結について申し入れがあった。両団体ともエジプト政府と関係が深い有力な団体として知られている。
FECは、平成19年1月中旬にエジプトを訪問する第1次FECエジプト経済事情等調査団がエジプト・カイロで両団体との提携の調印を予定している。
埴岡FEC副理事長はバドル駐日エジプト大使と毎月定期的に会い意見交換を行なっている
FECの埴岡副理事長は毎月2回、同大使館などで会い両国間の経済・文化交流促進のための事業について意見を交換している。両氏においては本音による活発な話し合いを行っている。