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ドイツのシュタンツェル駐日大使を招き第104回FEC日欧経済等フォーラムを開催=FEC日欧文化経済委員会

ドイツ 日欧文化経済委員会

2010年02月22日更新

日本とドイツの両国関係の現状と今後の展望をテーマに講演

講演するフォルカー・シュタンツェル駐日ドイツ大使

講演するフォルカー・シュタンツェル駐日ドイツ大使

第104回FEC日欧経済等フォーラムの開催風景

第104回FEC日欧経済等フォーラムの開催風景

とき

平成22年(2010)2月22日(月)12時〜14時

ところ

帝国ホテル東京「なだ万」

概要

平成22年2月22日にドイツのシュタンツェル駐日大使をお招きして第104回FEC日欧経済等フォーラムを開催した。

内容

民間外交推進協会(FEC)・日欧文化経済委員会(委員長・藤田弘道凸版印刷(株)相談役)は2月22日、シュタンツェル駐日ドイツ大使を招き、第104回日欧経済等フォーラム・昼食会を帝国ホテル東京で開催した。昼食会には、藤田弘道FEC日欧文化経済委員長・凸版印刷(株)相談役、松澤建(学)青山学院理事長、田中宏(株)クレハ取締役会長、山口範雄味の素(株)代表取締役会長、木島輝夫日欧文化経済委員・元駐アルゼンチン大使、井澤吉幸(株)ゆうちょ銀行取締役兼代表執行役社長らが出席した。

開会に際して藤田弘道FEC日欧文化経済委員長・凸版印刷(株)相談役は、「来年は日プロイセン修好通商条約調印の150周年。FECは、日独交流150周年にふさわしい催しを知日家のシュタンツェル大使と共に開催させていただければ嬉しい。貴国は日本にとり欧州最大の、また日本は貴国にとってアジア第二位の貿易相手国。今後の両国関係の発展と活性化、各分野での協力深化に向けて、大使のお力添えをいただければ幸いだ」と挨拶。シュタンツェル大使より「日本・ドイツ関係の現状と今後の展望」をテーマに、国際環境、政治・経済交流の課題について率直な見解が述べられ、講話後和食をともにして出席者と一問一答の懇談が和やかに行われた。

講演要旨

過去20年間の政治交流は以前に比べ弱くなった。両国の環境変化が背景にある。日本はバブル崩壊からの克服や中国台頭への対処が課題となり、ドイツは東西ドイツ統一とEUの発展が大きい。日本は政治と経済の改革を怠り景気刺激策を20年間続けた。中国の経済発展と軍事力増大に対し、日米安保体制に依存する日本はどう中国に向き合うのか。昨秋ドイツ統一20周年を祝ったが、東独の再建は惨めで独統一は苦難の過程だ。西独の連帯税負担は大きく、旧東独企業はコスト高から競争力を失った。市民も民主化、自由、自己責任の生活にとまどい、「オスタルジア(旧東独への郷愁)」と報道された。東欧各国の体制転換も苦境に立たされている。欧州の成功は、EU拡大、NATO拡大、ユーロ導入、国境開放、リスボン条約締結により社会的、文化的統一が完成したことだ。

今後の日独政治交流の推進力は、世界金融危機、気候変動、新興国、核軍縮、反テロの共通する5大グローバル課題となろう。G8やG20では責任をもって対処できない。日独は同じ規模で、自由貿易等の価値観を共有し協力可能だ。日独よりも、日EU協力が効果は大きい。世界金融危機対策としては、銀行監督制度の強化がある。気候変動問題では、日EUが最も効率的な技術を保有する。次のCOP16の前には政策調整が必要だ。新興国経済の成長から、先進国に低賃金と価格低下が波及し、企業収益を圧迫した。企業統治の是正を妥協なしに要求すべきだ。核軍縮は外交課題で、北朝鮮、イランの利益にもなる。最低線を示し、必要に応じて国連安保理で共同歩調をとるべきだ。反テロ対策として、アフガンやインド洋海賊問題に共同で対処すべし。

懇談要旨

田中宏(株)クレハ取締役会長:EUの発展もあったが日独経済関係は進展した。環境規制のように重複もあるが、規制がドイツからEUへ移り、ビジネスは楽になった。二酸化炭素対策として原発の平和利用に対するドイツの立場はどうか。

シュタンツェル大使:EU内でも推進派の仏と中止派の独など意見が分かれ、国連等に対するEU代表の意見調整に苦慮する。独国民は、核燃料の最終処理の安全性が確保されれば反対しない。すべての政党が、「原発は安全技術が開発されるまでの臨時的技術」との立場だ。


井澤吉幸(株)ゆうちょ銀行取締役兼代表執行役社長:
金融や会計はアングロ・サクソンとその他陣営との闘い。日独で金融、産業のデファクト・スタンダードを作り、アングロ・サクソン陣営と対抗すべし。独16州が夫々に産業を持ち生活も豊か。疲弊した日本の都市、地方との格差は大きい。ドイツとの差は何か。

シュタンツェル大使:アングロ・サクソン資本主義の過度の行動が金融危機を招いた。日欧の資本主義は市民生活を重視する。昨年日本語研修で甲府に滞在した。道路が整備され家屋も広いが、若者が都会へ行き高齢者が多い。ドイツでは逆に若者の地方移動が増加し、学校等の環境整備が必要で問題となっている。甲府は自然が保護され、東京も公共交通が発達し車がいらない。日本の生活は悪くない。産業社会の良いモデルになろう。橋下大阪府知事も地方分権を主張していた。

木島輝夫日欧文化経済委員・元駐アルゼンチン大使:ドイツの首相は州首相経験が多いが、メルケル首相の登場でドイツの政治風景は変化したのか。

シュタンツェル大使:州のトップが国政の長となる流れに大きな変化なない。メルケル首相は旧東独出身。初の女性党首でプロテスタントがカトリック党(CDU)の党首になった。

武居信男日蘭協会理事:シュレーダー首相時代の独米関係と、今の揺らぐ日米関係が似ているとの説があるが。

シュタンツェル大使:簡単には比較できない。NATOの再定義の過程が続いており、イラク戦争で米国と対立したが、同盟で信頼関係が構築されている。日米間の軋みも同盟関係では普通の問題。中国への対処について米国と日本の解決策は違う。

ペマ・ギャルポ桐蔭横浜大学大学院教授:鳩山政権は中国への対応策をもつが対中政策はない。ドイツのチベット向けODAは、チベットの民主化支持という国策に基づき実施された。日本は中国に気を使いすぎだ。

シュタンツェル大使:戦後の冷戦期米国はドイツに再軍備を要求し、ドイツは自軍をNATO軍に統合した。隣国に警戒感をもたせない再軍備が課題であった。対中政策がないのはドイツも同様だ。ドイツのチベット政策はEUと一致し、チベットの独立が最終目標ではなく、文化的自治を尊重する。中国企業進出の多いヘッセン州の首相は、中国との経済交流、ラマ法王との交流を夫々大事にしており、中国にも上手に伝えている。

松澤建(学)青山学院理事長:日本人の多くがチベット独立を支持している。独仏関係の秘訣は何か。日本とアジア各国との信頼関係形成に生かしたい。

シュタンツェル大使:日本は仏教国ゆえチベット問題に熱心なのは当然だ。良好な独仏関係は、戦争の大惨事回避を共通の目標として築かれた。独軍のNATO軍編入により隣国の不信感を除去できた。また主権の一部をEUに委任することで市民間にも信頼感が生まれた。

井澤吉幸(株)ゆうちょ銀行取締役兼代表執行役社長:ヘキストとローヌ・プーランが98年に合併し本社を仏ストラスブルグに置いたことが、独仏市民間の雪解けになったと解釈している。

シュタンツェル大使:17世紀以来独仏領土対立が繰り返され、19世紀に国家主義が加わり問題が複雑になった。

木島輝夫日欧文化経済委員・元駐アルゼンチン大使:日本の公的債務膨張は危険だ。大使の見解を伺いたい。

シュタンツェル大使:日本の将来の方向が見えない。過去20年間国内改革をしてこなかったが、尚世界2位の経済大国だ。企業の新興国戦略も、創造性豊かな戦略をとっている。何故国内で不安心理が強いのか。

(田丸周FEC常任参与・油研工業(株)常勤監査役・記)

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