シュタンツェル駐日ドイツ大使主催で第105回FEC日欧経済等フォーラムを開催=FEC日欧文化経済委員会
2010年06月30日更新
ドイツから見た日本について・日独協力関係の強化に向けての意見交換を行う
とき
平成22年(2010)6月30日(水)11時30分〜13時30分
ところ
駐日ドイツ大使公邸
概要
平成22年6月30日(水)にシュタンツェル駐日ドイツ大使主催で第105回FEC日欧経済等フォーラムを開催
内容
シュタンツェル駐日ドイツ大使は6月30日、藤田弘道凸版印刷(株)相談役、久米邦貞元駐ドイツ大使、内藤明人リンナイ(株)取締役会長、荒木浩東京電力(株)顧問、野村吉三郎全日本空輸(株)最高顧問、岡崎真雄ニッセイ同和損害保険(株)名誉会長、松尾邦彦国際石油開発帝石(株)相談役、日枝久(株)フジテレビジョン会長、兵頭長雄元駐ポーランド大使、木島輝夫元アルゼンチン大使、森田清第一三共(株)相談役らFEC役員を駐日ドイツ大使公邸の昼食会に招待した。今年は日独交流150周年を迎え、両国間の更なる関係強化が期待されている。冒頭にシュタンツェル大使は、「2月のFEC懇談会は大変興味深かったので、本日皆様をお招きした。滞日15年のドイツ通信社のニコライゼン東京支局長より「変化の中の日本」というテーマでお話をいただき、日独関係強化について意見交換したい」と挨拶し乾杯。埴岡清至FEC理事長は、「両国は、財政問題や環境エネルギー、新興国対策など多くの共通の課題を抱えている。本日のニコライゼン支局長の講話と、懇談に大いに期待したい。FECは両国関係強化に寄与する活動を歴代の大使と共に続けており、シュタンツェル大使とも日独交流150周年にふさわしい催しを共催し、日独友好関係が更に深まることを祈念する」と答礼挨拶。昼食会では、各役員からドイツとの関係強化に向けた所感が述べられ、大使らとドイツ料理を共にして和やかに意見交換を行った。
日独間に障害や政治問題はない。両国は多くの共通点あるが、長く倦怠感が漂う。中国への注目、高齢化、安保理常任理事国入りなどは共通の課題だ。アフガン支援方法も同じだ。日本はEUとともに温暖化ガス削減の高い目標をもつが、人民元レートを巡り団結して行動を起こすことは少ない。新たに誕生した民主党政権は欧州に近い立場でドイツは歓迎した。菅内閣は政策を重視するが、公約が早期に実現せずやや失望した。日本はアジアに注力し欧州が視野の外に。欧州もギリシャ危機で外への発信余力がなくなった。保護主義の懸念も浮上した。EUは韓国とFTAを締結したが日本とは未締結。ドイツ自動車産業がFTAに否定的といわれている。日本が停滞している間に中国が発展し、ドイツも大きな関心を向けた。日本の若者が内向化し、アジアの若者の多くは米国へ留学している。海外の日本企業は物を売ることが中心で、外国駐在経験が評価されないとドイツ人は見ている。日本の危機感が薄いのではないか。経済は20年間停滞しているが、豊かで健康的な長寿国。世界1の貯蓄率。公的債務はGDP比200%近いが、日本人が自国を信頼しており国債は殆ど国内消化される。中国が世界2位の経済大国になっても日本は先端技術でリードしており日本の優位性は揺るがない。日独欧に共通する関心分野は学術研究だ。日本は、実利主義的に対処しているが、自己変革を迫られており社会、政治構造へ影響しよう。
日本はアジア諸国と歴史認識、領土問題で緊張しているが、政府はうまく対処している。日米同盟と韓国、台湾といった緩衝地域があるのは日本の国益だ。北朝鮮経済はパチンコ産業と関係があり、日本が必要だ。韓国、中国との多少の摩擦は悪くない。領土問題が移民阻止の口実にもなっているのは判る。鳩山政権のアジア共同体構想は官僚に歓迎されなかった。日本の歴史認識や、近隣に民主国家が少なく、欧州のように価値感が共有できない。霞が関は菅首相の現実感覚に安堵している。ドイツとEUからの、対日関係強化の声に日本は応えて欲しい。
内藤明人リンナイ(株)取締役会長:ブルガリアはEUに加盟しロシアの圧力が緩和されたが、ドイツの財政負担は増えた。ドイツのEU内負担についての考えを伺いたい。
シュタンツェル大使:ドイツは財政負担の犠牲より、将来も続く市場拡大メリットが大きい。冷戦後も東欧の独立で地域の不安定化が懸念されたが、拡大EUで大きな平和を得た。
松尾邦彦国際石油開発帝石(株)相談役:メルケル首相のギリシャ支援努力は市場で評価されなかった。先進国の政権は軒並み支持率が低下し長期戦略が困難になっている。背景は何か。
ニコライゼン支局長:米国、日本の新政権への当初期待が高すぎた反動で、その後の成果に失望し支持率が低下した。菅政権には2013年総選挙までの時間的猶予があり政策は実現可能と思う。消費税引き上げに言及したのは遅すぎた。支持率低下は未解決課題への圧力だ。
兵藤長雄元駐ポーランド大使:ポーランドの安全保障上の脅威は依然としてロシア。独露経済協調が進むことに危惧する人もいる。日独間でもロシア問題を議論すべきと思う。
シュタンツェル大使:ポーランドのEU加盟で3カ国の緊張は消えた。日独間で、ロシアや中国問題の意見交換をすることは、両国の知見が増し有益と思う。
井澤吉幸(株)ゆうちょ銀行社長:小国ギリシャの財政危機でユーロの価値は大幅に下落した。金融と財政が分離したEUの将来を危惧しており、メルケル首相の強い指導力が必要だ。
シュタンツェル大使:ユーロは発足当初過大評価だった。現在の2割安は現実的水準か。独国民に対するギリシャ支援の説明に政府は苦慮している。拡大EUの最大受益国はドイツだが、ユーロ非参加国にも利点がありEUとしてギリシャ支援を決定した。
ニコライゼン支局長:ユーロの参加・運用基準が手直しされ、柔軟な通貨制度へ改善される必要があろう。
朝田照男丸紅(株)社長:若者の内向き姿勢とは対照的に、日本企業の海外事業は飛躍的に拡大している。当社の欧州企業との事業提携は米企業を上回り増加しているが、中国・アジア市場では少ない。原発、高速鉄道等の分野では、日欧ともPPPなどの官民連携の事業システムが求められており、輸出保険、ODA等を活用した日独協調PJを推進したい。
木島輝夫元アルゼンチン大使:民間の関係は緊密で良好だが、政府間で新しい動きはあるか。
シュタンツェル大使:両国はともに安定し共通の価値感も多く有する。ドイツにとって日本はロシア、米国、中国、インドとの関係を上回る。「日独交流150周年」の利用価値は大きく、大使館は政治、経済、文化面の各種催しを計画しており、FECも是非提案していただきたい。
ニコライゼン支局長:ドイツの若い政治家の対日関心が落ちていると聞いた。若い国会議員の相互の関心を高める必要があるので、民間企業から日本の議員に訴えて欲しい。
野村吉三郎全日本空輸(株)最高顧問:観光も外交、平和のパスポート。両国間の観光客を増大させたい。
埴岡清至FEC理事長:両国関係強化には継続努力が重要。FECも民間の立場から協力したい。
(田丸周FEC常任参与・油研工業(株)常勤監査役・記)