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FEC日蘭交流400年記念フォーラム・昼食会=FEC日欧文化経済委員会

オランダ 日欧文化経済委員会

2010年02月24日更新

日本とオランダの交流400周年を記念して、ドゥ・ヘーア駐日オランダ大使が「古伊万里、長い日蘭交易史の中で一際輝きを放つ1つの章から学べることとは?」をテーマに講演

講演するドゥ・ヘーア駐日オランダ大使

講演するドゥ・ヘーア駐日オランダ大使

FEC日蘭交流400年記念フォーラムの開催風景

FEC日蘭交流400年記念フォーラムの開催風景

とき

平成22年(2010)2月24日(水)12時〜13時(昼食会)、13時半〜15時(フォーラム)

ところ

帝国ホテル東京「梅の間」(昼食会)、「牡丹の間」(フォーラム)

概要

平成22年2月24日、ドゥ・ヘーア駐日オランダ大使をお招きして日蘭交流400年記念フォーラム・昼食会を開催

内容

民間外交推進協会(FEC)・日欧文化経済委員会(委員長・藤田弘道凸版印刷(株)相談役)は2月24日、フィリップ・ドゥ・ヘーア駐日オランダ大使を招き、日蘭交流400年記念フォーラムを帝国ホテル東京で開催した。フォーラムには、藤田弘道FEC日欧文化経済委員長・凸版印刷(株)相談役、北修爾阪和興業(株)代表取締役社長、田代圓東ソー(株)取締役相談役、渡邊五郎森ビル(株)特別顧問、都甲岳洋(株)三井物産戦略研究所特別顧問・元駐ロシア大使、佐藤行雄(財)日本国際問題研究所副会長、福川伸次(財)機械産業記念事業財団会長・元通商産業事務次官ら約40人が出席した。在日オランダ大使館からは、ミッヘルス特命全権公使・経済部長、ムルダー政治担当全権公使、ボーンストラ農業・自然・食品安全担当参事官、ブレーカー科学技術参事官らが同席した。

開会に際して藤田弘道FEC日欧文化経済委員長・凸版印刷(株)相談役は、「昨年は、徳川家康がオランダに朱印状(通商許可証)を交付し通商が開始され四百周年を迎え、多くの記念行事が成功裏に実施された。本日は、日蘭交流400年記念行事の総仕上げの意味もこめて、大使の記念講演と、出席者との有益な意見交換を期待したい」と挨拶。ヘーア駐日オランダ大使より「古伊万里、長い日蘭交易史の中でも一際輝きを放つひとつの章から学べることとは?」をテーマに、両国交流の歴史的意義についてスライドを使用した講演が行われた。会場には、朱印状の複製が展示され、出席者は4百年前の日蘭貿易に思いを馳せながら、講演後一問一答の懇談が和やかに行われた。最後に、北修爾阪和興業(株)代表取締役社長が閉会挨拶を行った。

ヘーア駐日オランダ大使講話要旨

日本とオランダの交易の繁栄と没落は多くを教えてくれる。ポルトガル人は大量の東洋の物産を海上輸送し、スペイン人は新大陸で入手した金、銀で、アジアの香料、絹、陶磁器を購入した。明王朝は、綿花、絹、陶磁器、茶生産で大きく繁栄し、蘇州の大邸宅や庭園、高級陶器や書籍を楽しむ上流社会は信長、秀吉、家康に多大の刺激を与えた。中国沿岸部の富は各地から交易商人や日本の海賊(武装商人)を引き付けたが、徳川幕府が鎖国政策を執ったために、江戸時代とは異なる生活様式や経済活動は封印された。

当時オランダはスペインと戦争状態にあり、スペインが東洋貿易を独占していた。1602年オランダ東インド会社(VOC)が誕生し、オランダは着実に交易圏を拡大し、台湾を押え、日本にも到達していた。オランダはポルトガルやスペインの植民地を占領し香料を容易に入手したが、統合度が高く武力を有していた中国や日本には平和的に接近した。VOCは高品質の日本の銅と劣悪低価格のビルマの銅を買い付け、銅貨鋳造で収益を得た。また銀換算の日本の金価格は、中国より約20%低く、貨幣取引が収入源となった。アジア、中東、欧州等での陶磁器需要は非常に高く、高価な陶磁器が景徳鎮窯から輸出され、VOCの利益率は採算ラインの60%を上回った。30年戦争の影響から、メキシコ産の銀は欧州に流れ、東アジアの銀が入手困難となった。揚子江地域では銀換算の物価上昇と顧客の減少から、窯の稼動が止まり不況に陥った。北東モンゴル・満州の脅威も加わり、明王朝は1644年滅亡する。景徳鎮は壊滅状態となり、製造技術と生産施設は満州政権に独占され、宮廷や首都圏での供給量確保のため、1656年から1684年まで輸出規制が敷かれ、VOCへの供給は停止された。

秀吉の朝鮮出兵で日本に連れてこられた陶工達は、1616年有田で作陶を始めた。高度な技術と技量を備え、輸入規制により高価格が維持された。日本の陶工は、伝統に縛られた中国陶工とは異なり、独自の紋章を付した中国絵画やオランダの風景への注文にも容易に応えた。この交易は中国が輸出規制を開始した1656年以来1世紀続いた。欧州では有田焼はその輸出港に因み、伊万里焼と呼ばれている。中国式の染付から、やがて濃いコバルトブルー、真紅の彩色や金箔を施した典型的な伊万里が製作され、その後左右非対称紋様の柿右衛門も輸出品目に加わった。価格は二倍になっていたが、伊万里への需要は強く1670年代以降、年平均40万点の伊万里が輸出された。一割がヨーロッパ向け、残りがインド・ペルシャ向けだった。中国の輸出禁止が解かれ、景徳鎮市場が再び活況を呈する頃まで古伊万里は世界を席巻した。オランダは富を蓄え、アムステルダムは欧州の君主、貴族にとって重要な供給元となった。ヴェルサイユ宮殿をモデルとした彼らの宮殿用の大きな伊万里に対する需要は最高潮に達した。1688年の名誉革命でオランダ国王が英国王となり、英国貴族も伊万里を調達した。マイセン窯やセーブル窯などは高価な伊万里に代る低価格品だった。また、中国は1684年輸出規制を解き、模倣品で市場参入を図った。景徳鎮では日本製伊万里と同品質の陶器が大量に安く生産され、伊万里の輸出品に大打撃を与えた。VOC 社の注文は1756年で終了した。

昨年10月にバルケネンデ首相が来日し、天皇陛下に謁見し、鳩山首相と二国間協議を行い、慶応大学から名誉博士号を授与された。「日本から学ぶ」ことが訪日目的であった。研究開発分野で日本は世界のトップリーダーであり、首相一行は訪問先の現場で、経済的繁栄維持のためには、競争相手よりも優れた知恵や技術を持つことが周知徹底されていることに驚嘆した。しかし新製品の開発時間は短く、コストも莫大だ。新商品の寿命も、著作権を単に模倣する権利と考えている人達からの圧迫に曝されている。オランダに投資している日本の大手企業のCEOは、「古くからの友、信頼できる友、特許を尊重する友こそが大切」と言った。深い信頼と、安定した法制度があって初めて、両者が協力して新技術を生み出せる。この古い友人は誰か。徳川家康が1609年、日・蘭交易を許可した御朱印状の最初の言葉をご覧頂きたい。

懇談要旨

福川伸次(財)機械産業記念事業財団会長:EU他国と比べて オランダ経済が比較的良好な理由は何か。

ヘーア駐日オランダ大使:当国も同様に金融危機の影響を受けたが、相違は開放経済と危機への備えだ。景気対策を機動的に発動し、雇用を守り失業率の上昇を抑えた(5.5%)。

田丸周FEC常任参与:オランダは農業補助金ゼロの国。EUの東方拡大により、EU予算上農業補助金が増え、貴国に必要な研究開発費が制限される懸念はないか。

ヘーア駐日オランダ大使:EUは政治統合体で政治的に動く。ジャン・モネが「経済は国(非合理的政策)とビジネス(反顧客カルテル等)の2つの敵をもつ」と言い、EU条約は域内市場から各国政府を除外した。競争促進、消費者保護等、経済単位としては成功している。

ブレーカー科学技術参事官:世界的に研究開発費は減少傾向にある。当国はGDP比1.7%(日本の半分)維持の方針で、1、2年間企業へ研究開発維持目的の助成金を支給している。

武居信男日蘭協会理事:日・EU関係の中で日蘭関係をどう両立させたらよいか。

ヘーア駐日オランダ大使:EUの機能についての日本政府の理解が少なく、2国間関係が多い。欧州側は新しい関係を模索し知識量も増大しているが、日本は旧いモデルに慣れている。文化交流による関係強化も重要だ。

北修爾阪和興業(株)代表取締役社長・閉会挨拶

 

東洋と西洋の出会いについて、インパクトある講演に感謝する。4百年前の朱印状の複製にも感激した。日本、中国、東洋に造詣深いヘーア大使をお迎えした日本は幸運だ。世界の時間距離は短くなったが、大航海時代の東西の出会いは困難で忍耐力を要した。両国は貴重な歴史と伝統をもつ。手を携え、未来へ向けて新しい地平線を拓く関係への発展を祈念する。

ヘーア駐日オランダ大使歓迎昼食会昼食会

 

FECは日蘭交流400年記念フォーラム開催を前に、帝国ホテル東京内の別室にてヘーア駐日オランダ大使を招き歓迎昼食会を開催した。オランダ側はヘーア大使、ミッヘルス特命全権公使・経済部長、ムルダー政治担当全権公使、ボーンストラ農業・自然・食品安全担当参事官ら7人で、 FEC側は藤田弘道日欧文化経済委員長、北修爾阪和興業(株)代表取締役社長、渡邊五郎森ビル(株)特別顧問、都甲岳洋(株)三井物産戦略研究所特別顧問・元駐ロシア大使ら7人が出席し、昼食をともに、政治、労働、農業問題等について意見交換を行った。

昼食会懇談要旨

 

藤田弘道日欧文化経済委員長:日蘭外交関係開設150周年、通商400年の周年行事開催を祝い、オランダ大使館と本協会との緊密な関係への御礼を兼ねての昼食懇談会。FEC埴岡常任副会長は、ヘーア大使ご着任以来両国関係の一層の深化のために大使と頻繁に意見交換を重ね、多くの催しを共に実施した。本年はFEC調査団を貴国へ派遣し、首相等主要閣僚と面会したい。(藤田委員長の発声で一同乾杯)

ヘーア駐日オランダ大使:埴岡氏の回復を祈っている。昨年の400周年記念祝典は大成功でFECの尽力に感謝する。両国関係は多層的に発展しており、今年の人的交流も活発だ。9月に皇太子が水、環境衛生関連の訪日、10月に経営者連盟会長の訪日が夫々予定されている。日本の経団連新会長の方針はどのようなものか。

田丸周FEC常任参与:仙石国家戦略相は、「原発、新幹線、環境等日本の先端技術を国家戦略として海外に売り込む」と云っており、経済界と一緒に推進されよう。米倉経団連新会長はFECの枢要メンバー。

ヘーア駐日オランダ大使:保護的な農業政策が新幹線技術輸出の障害になってはいけない。コメ政策は変わるか

北修爾阪和興業(株)代表取締役社長:若者の離農も顕著。FTAを展望し、民主党政権は農林産業の見直しを進めるだろう。

ヘーア駐日オランダ大使:オランダで先週大きな政変があった。アフガン派兵継続を巡り連立政権が崩壊し、6月総選挙の予定。政府の抜本的課題は財政赤字問題にあり、歳出削減の内容や景気刺激策の縮小で失敗した。

田丸周FEC常任参与:ワークシェアリング成功の秘訣は何か。

ミッヘルス特命全権公使:80年代に政労使で労働コスト削減が合意され、労組は賃下げと時短を要求したのが原型。不況の現在は、政府が企業の技術訓練費用を一時的に補助し雇用が維持される。失業者対策として、政府が一定の業種で失業者の再就職を支援する。失業対策ではなく職場・雇用を保証する「フレッキシュリティ」制度だ。当国では正規・非正規の待遇(訓練、賃金、年金等)は同じ。労働時間だけが異なり女性活用に有効なメカニズムだ。

渡邊五郎森ビル(株)特別顧問:欧州は金融危機の影響が大きかったが、貴国はうまく対処できたのか。

ヘーア駐日オランダ大使:強力な社会的安全網と、相対的に健全な財政のおかげで影響は緩和された。

今田潔信越化学工業(株)顧問:日本の農業人口は高齢化し、政府の戸別補償も従来どおり。農業の法人化が必要だ。オランダの実情はどうか。

ボーンストラ農業・自然・食品安全担当参事官:農業人口は減っているが若く、就農希望者も多い。農地面積は不変。補助金がなく収益率が最高の産業。日本の花や果物は品質が高く技能が有名だが、オランダの農業はビジネスと呼ばれ情報技術も重要だ。

(田丸周FEC常任参与・油研工業(株)常勤監査役・記)

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