莫邦富ジャーナリスト・作家を招き第70回FEC中国問題研究会を開催=FEC日中文化経済委員会
2010年06月16日更新
中国最新市場事情-潜在力はかりしれない22の地方都市をテーマに講演
とき
平成22年(2010)6月16日(水)12時〜14時
ところ
ホテルオークラ東京「スターライト」
概要
平成22年6月16日(水)に莫邦富ジャーナリスト・作家を招き第70回FEC中国問題研究会を開催
内容
民間外交推進協会(FEC)・日中文化経済委員会(委員長・生田正治(株)商船三井最高顧問)は6月16日、知日派ジャーナリストとして、政治経済から社会文化にいたる幅広い分野で活躍をされている莫邦富氏を招き、「中国最新市場事情-潜在力はかりしれない22の無名地方都市」をテーマに第70回中国問題研究会をホテルオークラ東京で開催した。近年、中国内陸部の都市に外資系企業が移転するケースが多くなっており、沿海部での労働者確保が難しくなっている。研究会には、田代圓東ソー(株)取締役相談役、渡邊五郎森ビル(株)特別顧問、岡崎真雄ニッセイ同和損害保険(株)名誉会長、尾崎護矢崎総業(株)顧問、内田勲横河電機(株)代表取締役会長、伊藤直彦日本貨物鉄道(株)代表取締役会長、中嶋洋平日油(株)代表取締役会長、小野寺優(株)ニフコ代表取締役社長らFEC役員、法人会員多数が出席した。
開会に際してFEC日中文化経済委員長の生田正治(株)商船三井最高顧問より、「リーマンショック以降、予想以上に中国経済が順調に発展しており、持続的に8%以上の経済成長を達成するか世界が期待している。地方都市が近代化していけばかなり長期にわたって成長しよう。」と主催者挨拶があった。莫講師より写真入りの講演資料に基づき、実際に訪問した際のエピソードを交え「中国最新22の地方都市の現状」について講演があり、講演後昼食懇談会形式で出席者と一問一答の質疑応答が活発に行われた。出席者からは、正に理論先行ではなく、自分で歩いて肌で感じた中国の内陸を中心とした現状が聞け、理解を深めることが出来たと好評を博した。
年間20回位中国国内を回っているが、主は中国内陸部の地方都市。自分がマークしている50都市を本にまとめたところ、反響が大きく、日本の全ての大手銀行から講演依頼があった。
山東省の東営の一人当たりのGDPは中国5位で、上海は13位。日本の企業進出は殆ど無いが、東営は中国のドバイのような産油都市。東営のデパートに出店したオメガの専門店の売上は中国で3位。東営市の幹部は日本の化粧品メーカーに進出を3年間要請し続けたが、未だに相手にされていない。シャープが最初に進出した時、ブランドが全く認知されていなかったが、1年間女性社員が販売努力をした結果32倍以上の売上を上げた。努力すれば市場は切り開けるものであることを証明した。
河南省鄭州市に台湾系の丹尼斯デパートが1997年に進出し、開店最初の年の売上は1.8億元だったが、08年はその10倍の18億元になり、今や同店は3号店を持つほどに成長し、省内に百貨店8、ショッピングセンター28、専門店12、さらに数十のコンビニ店をもつ一大小売業者となった。同店に日本人を案内したが上海のデパートとまったく変わらない、地方にこのようなデパートがあるのかと驚いていた。
丹尼斯デパート社長に聞いたところ、鄭州市は、南北鉄道と東西鉄道の交差するところ。中国のデパート競争が初めて行われたところで彼らの年間成長率は30%。河南省の人口は1億人。中国以外であれば立派な一つの国の規模。河南省は昨年の中国国内のGDP規模は5位で、そこで一番成功しているデパートの社長に日系企業は11年前に一度来たが、それ以降一度も売り込みに来たことが無いとのこと。これが日系企業の現状で、これを改める必要があると昨年5月に日本で講演した。先月再度同市を訪問し丹尼斯デパート社長に聞いたところ、昨年9月に日本の商社が尋ねてきて以降、昨月名古屋だけで30社の企業が鄭州市を視察に来たとのことであった。
安徽省合肥市には、カルフールはじめウォルマート、TESCO、メトロ等10以上のスーパー大手が進出しているが、日系の進出は無い。日本の中国進出は沿海部に集中している。
成都に進出したイトーヨーカドーの2号店は、日本国内も含めた190店舗の中で現在売上1位。私が成都のイトーヨーカドーを取り上げたのは、たった5年前。成都は水害等にあったことが無いので、市民は来年も良いだろうと思い、貯蓄率が低く、購買力が非常に高い。成都のイトーヨーカドーの社長が北京に栄転したところ、北京のデパートの方の品揃えが成都よりワンランク下で驚いていた。成都市の幹部は都市のアピールの際、茶館が必ずでてくる。都市の豊かさを視覚的に見ると茶館が多いかどうか、茶館が多い都市は豊かな都市。広州、蘇州、杭州等は茶館文化が発達している。
中国の成功している企業を見ると、ほとんど地方都市出身。中国家電メーカーの最大手のハイアールは山東省青島市、世界最大を誇る電子レンジメーカー、格蘭仕(ギャランツ)は広東省順徳市、最大の民族系自動車メーカー・奇瑞(チェリー)は安徽省蕪湖市など多数。
河南省漯河市を昨年5月訪問した。同市は中国内陸の最大の食品博覧会を8回も開催しており、1300ブース、800社が出展しており、ほとんどが今まで聞いたことの無いメーカーばかりであったが、中国の内陸部ばかりで商売をしている企業で、彼らはリーマンショックの影響をほとんど受けずにどんどん発展している。
田代圓東ソー(株)取締役相談役:地方都市をささえている基盤は何か。
莫邦富講師:漯河市のGDPの構造を見ると40%が食品加工業。漯河市にはハムの大手企業が有り、食肉加工の規模では世界3位に入る。小麦、養豚、食材産業の発展で地元産業の発展に貢献している。
地元の中産階級の家庭を見るようにしているが、地方都市でも上海の住宅を視察した際と同じ薄型大画面のTVが有り、シャンプー、リンスなども海外ブランドの物を使っているなど変わらない。沿海部で労働者が集められなくなってきているが、地方(内陸部)で産業が育って来ている。その要因は外資系企業の地方都市進出。
渡邉五郎森ビル(株)特別顧問:中大(核)都市(100万人以上の都市が166)に対する支援を具体的にどのようにやっているのか。
莫邦富講師:地方発展に政府は非常に積極的に応援している。伸びそうな企業には中国政府は、土地を利用して(工業用地を)優遇して提供し、企業は土地を担保に銀行からお金を借りられる。
また、銀行は国策として企業を支援している。例えば、チェリー社に1500億円の買収資金を融資している。
尾崎護矢崎総業(株)顧問:山東半島の将来をどのようにお考えか。
莫邦富講師:中国経済を飛行機に例えると、今まではエンジンは2つあった。外デルタと内デルタ。中国政府としては速く3番目と4番目のエンジンをみつけたいと考えていて。3番目は山東半島、4番目は中国東北地方と期待していた。しかし、結果から見ると失敗した。一番進出している企業は韓国の労働集約型企業であった。山東省は農業の、東北もお金をつぎ込めばと期待していた。しかし、東北地方は中国で一番社会主義的なので外資系企業は進出しない。私に言わせるとせいぜい大連まで。それより北はなかなか難しい。そこで、期せずして出てきたのが中部地域。今中部地域は沿海地域より経済成長率が高い。中部地域の6つの省の中で山西省をのぞく5つの省はこれからのびる。四番目のエンジンとして、天津の沿海地域の開発にかけている。
中嶋洋平日油(株)代表取締役会長:沿海部が発展し、今は内陸部で地域にあった産業を発展させているが、必ず最後は誰かが買わないと発展しない。経済が回っている間は良いが、どこかで農民を豊かにしないといけないが、農民を豊かにするには国が大変だということだが、人口の半分になる農民の所得を上げるために中国政府は何かをしているのか?
莫邦富講師:中国政府はかなり早い時期から内需を発展させないといけないと知っているが、これまでは輸出振興策が中心だった。しかし、今回の金融危機で物理的に中に目を向けさせられた。試行錯誤の結果、この一年半やって中国政府は内需市場は有望とわかった。
他方、中国人のDNAに社会保障に対する不安感がすり込まれている。そのため中国の歴史上初めて微々たる額ではあるが、胡錦涛主席は農民へのセーフティネットを引いた。最大の理由は内需の刺激だと考えている。
2004年頃から農村の暮らしが少し楽になって来た。胡錦涛国家主席と温家宝首相への評価が高い。両者は最貧の省で働いたことが有るのでやり方を知っている。
例えば希望者には一世帯に1頭の子牛を買わせる。子牛を買うのに1100元かかるが、700元を政府が出し、農民は400元出して育てる。翌年2000元で売れる。農地の地ならしの補助などいろいろな政策を採っている。
(前田貴俊FEC企画事業部次長・記)