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第53回FEC中国問題研究会を開催し中国の内政情勢、対外関係、直面する諸課題について大いに討議する

中国 日中文化経済委員会

2008年11月11日更新

FEC日中文化経済委員会=3回目となる清水美和東京新聞論説委員を招いての中国問題研究会

講演の清水東京新聞論説委員

講演の清水東京新聞論説委員

第53回中国問題研究会開催風景

第53回中国問題研究会開催風景

とき

平成20年(2008)11月11日(火) 12時〜14時

ところ

ホテルオークラ東京「スターライト」

概要

第53回中国問題研究会を開催し中国内政情勢、外交関係、直面する課題について討議する

内容

テーマ

FEC日中文化経済委員会(委員長生田正治(株)商船三井相談役)は11月11日、清水義和東京新聞論説委員を招き、「「金融風暴」下の中国と日中関係」をテーマに第53回中国問題研究会をホテルオークラ東京で開催した。懇談会には、FEC役員、法人会員らの大手企業の幹部多数が出席した。

内 容

開会に際して生田日中文化経済委員長より、「日本は一人当たり所得で世界32位(国連調査)。中国の経済規模は2016年に米国を抜くとの予測がある。金融危機で世界は物作りの新しい資本主義への移行期にあり、日本は地政学的立場から何をすべきか考える好機でもある。有益な話を期待したい」と主催者挨拶。埴岡理事長より、「清水東京新聞論説委員は中国の裏表に知悉した第1人者。過去2回の当研究会での講演も好評であった。良い話、悪い話も率直に伺いたい」と講師紹介と開会の挨拶があった。続いて、清水論説委員より講演要旨資料に基づき、経済減速の背景、政治情勢、対日政策についての講演があり、講演後は生田委員長の進行で出席者とオフレコを交えながら一問一答の昼食懇談会が行われた。出席者からは、中国の内政情勢、対外関係、直面する中国の抱える課題等を体系的に理解できたと好評を博した。

概 要

中国の経済成長率は07年の11.9%から08年第3四半期は9%へ減速し、来年は更に低下が予測される。年2千万人の雇用確保には8%成長が必要故、危機感が強く昨日の景気刺激策(57兆円)発表への期待が高まっている。経済減速は金融危機の影響もあるが、昨年来の融資総量規制等の過熱防止策が予想以上に景気を下振れさせた。人民元上昇の容認(3年で20%)、労働契約法施行と最低賃金の上昇(20%)等の「産業構造転換」策は、輸出企業の不振と雇用不安を招き、政府の「ゴム印」と揶揄される全人代で厳しく批判された。中小企業倒産が多発し民工の帰郷も活発化した。胡政権は10月から産業構造転換を一時棚上げし、利下げ、財政出動等緩和策へ転換した。

マクロ経済運営を巡り政策論争が激化しているが、切磋琢磨し政策を策定する過程を反映したもので、党・政府の関係は強固と思う。党上層部には3つの派閥がある。胡錦濤代表の共産主義青年団が主導権を握り、格差是正や環境対策に熱心だが、実務経験は少ない。党指導部の多数派が旧江沢民派。都市の新興富裕層が基盤で、90年代の成長路線を主導する。「太子党」は経済利害で結集し、電力、石油等民営化企業の大半を支配し、省エネ・環境対策で対立する。習近平国家副主席がトップに立ち、4年後の次期最高指導者を狙っている。党内抗争に直面する胡錦濤は、直接選挙で党政治局員を選抜し、中央指導部の意向を反映したメディアと住民運動で化学工場を操業停止に追い込むなど、「党内民主化」と「下からの民主化」手法も注目される。

またナショナリズムに訴え求心力を高めているが両刃の剣だ。来年はチベット動乱50年、天安門事件20年でもあり社会不安も懸念される。チベット騒乱後の反仏デモはEUに警戒心を生んだ。行き過ぎると胡政権の基盤も揺らぐ。

対日関係は不安定。胡錦濤は対日関係の改善に力を入れているが日本敵視の中で少数派だ。四川大地震の自衛隊機受け入れを辞退し、東シナ海ガス田開発では異例の声明(「共同開発ではなく協力開発」)を発表、出資協議は進んでいない。台湾とは進展したパンダ協議も日本とは全く進んでいない。ギョーザ事件の本格解明も日中首脳会談でやっと動き出し、天洋食品内に犯人がいる模様と判明した。

日中両国は最大のドル債権国。金融危機に対する両国の協議は米国の金融安定に貢献する。韓国李大統領が「日中韓で通貨安定基金を」と提案したように、日中韓の連携も重要だ。対中協力では環境・省エネ分野が有望だ。麻生政権は内政面で混乱しており対中戦略への期待は悲観的。リーダーシップなく官僚も様子見の姿勢で、日中協力が前進しない懸念がある。

懇談・質疑応答

生田日中文化経済委員長:ガス田問題で中国は「出資させるが主権問題は別」と主張。日本は原則論に終始し将来に亘って完敗した。平等の立場に持っていかないと屈辱外交となる。

清水講師:膨大な先行投資で探査したのに日本に出資させたとして、中国内では中国が大きく譲歩したと云われた。日本は主権問題を棚上げして紛争を回避した。

伊藤日本貨物鉄道代表取締役会長:中国の統計数字の信憑性は疑わしい。どう扱ったらよいか。

清水講師:例えば賃金水準も非課税の付加部分を入れると2倍位になる。捕捉されない分が日本より多いのは確か。傾向値、変化は実態を反映するので参考にできる。

生田委員長:権力闘争がリアルタイムで見られるようだが、政治の民主化は進んでいるのか。

清水講師:全人代で利害対立を反映した論争が外から見えるようになっており、調整機能が働いている。政治改革の可能性がある。

渡邊森ビル特別顧問:中国が3%成長へ大きく減速したらどうなるか。

清水講師:9%成長でも沿岸部から農村へ民工が逆流しているが、土地流動化により土地なし農民が増加している。農民の騒乱が激化し農村対策が急務となろう。

武田AOCホールディングス取締役会長:世界が頼るのは中国だ。マクロ政策の有効性など、これまでの政策評価は。

清水講師:輸出増加による過剰流動性が消費拡大と株・不動産バブルを発生させたことを胡政権は懸念。農村投資等へ政策転換したが、不動産富裕層の反発から緩和策へ切り替えた。

田丸リケン常勤監査役:98年のアジア通貨危機時に中国は高速道路建設で8%以上の成長率を確保した。今度の刺激策では何が目玉か。鉄道等のインフラ投資が期待できるのか。

清水講師:米国の対中批判(元切り上げ圧力等)が続き、米連邦住宅抵当公社債権等4千億ドルを抱える中銀総裁への批判等、米国への金融支援がむずかしい中での財政出動だ。住宅、鉄道、道路等が発表されたが中身は不明。真水は少ないかもしれない。

渡邉ニフコ特別顧問:チベット問題をどう処理しようとしているのか。

清水講師:02年以来の両国対話は昨年夏打ち切られた。チベットの活仏認定は中国国務院の許可が必要で、中国は次のラマと事態を収拾する方針。五輪後強硬姿勢を強め、対話後退の懸念がある。ウイグル同様に徹底弾圧し、暴動が発生したら、テロ問題を口実に鎮圧する構えで漢民族の支持を得ている。

野村全日本空輸最高顧問:「三通」が緩和されるが、台湾関係はどうか。

清水講師:台湾の国民党政権は基盤弱く対中関係強化を意図するが、胡政権は04年以来順調な対話路線を維持する意向。金融危機から両国の経済メリットの期待が低下したのも事実。中台接近も間違えば、民進党への政権交代もある。

稲森味の素特別顧問:日中の「戦略的互恵関係」の実体は何か。

清水講師:安倍首相当時に、中身がないまま「ウィン・ウィンの関係」を訳したもの。中国首脳来日時にも項目の羅列で新鮮味がなかった。今も金融危機対策、環境・省エネ対策の具体策が見えてこない。

中嶋日油代表取締役会長:中国国民の価値観は多様化しているか。軍は一枚岩か。

清水講師:愛国教育で中国の屈辱の近代史が宣伝され、日本が悪者の構図は変わっていない。対日関係で反日感情が存在するのは止むを得ない。現役軍人は職業軍人集団で、軍という利益集団で発言力をもつ。台湾問題や大地震の対応で齟齬も。メディアの「愛国、強国」と結びつくと、合理的政策の幅を狭める懸念がある。「軍は党の軍であり国軍ではない」と主張するのは、統率権は国防部にあるが作戦指揮は党にあるから。最高指導部も胡錦濤以外は軍人である。戦前の日本に似ている。仮想敵国は米国。

主な出席者

[ゲスト] 清水美和 東京新聞論説委員

[FEC役員・会員]

生田 正治 FEC日中文化経済委員長・(株)商船三井相談役

稲森 俊介 味の素(株)特別顧問・元会長 野村吉三郎 全日本空輸(株)最高顧問・元会長

岡崎 真雄 ニッセイ同和損害保険(株)名誉会長 伊藤 直彦 日本貨物鉄道(株)代表取締役会長

中嶋 洋平 日油(株)代表取締役会長 蜂谷 哲也 さくらクリニック院長・医師

渡邉 隆治 (株)ニフコ特別顧問・前社長 渡邊 五郎 森ビル(株)特別顧問

神山 茂 (株)ジャステック代表取締役社長  水沼 正剛 電源開発(株)常務執行役員

川田 隆司 (株)ボルテックスセイグン常務取締役 四十物 実 ANAセールス(株)代表取締役社長

盛田 敦夫 敷島製パン(株)代表取締役社長 田丸  周 (株)リケン常勤監査役

久保 隆男 (株)ニトリ監査役 松本 恭人 NECソフト(株)海外ソリューション事業部グループマネージャー

[FEC本部役員等]

埴岡 和正 民間外交推進協会(FEC)理事長

前田 貴俊 民間外交推進協会(FEC)企画事業部次長

(敬称略・順不同)

 

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