ラオスのブアソン首相を招き、第52回FECアセアン問題研究会・昼食会を開催
2009年05月22日更新
とき
平成21年(2009)5月22日(金) 12時00分〜13時45分
ところ
帝国ホテル東京「蘭の間」
概要
ラオスのブアソン首相を招き、第52回アセアン問題研究会を開催
内容
FEC・民間外交推進協会(埴岡和正理事長)は5月22日、ラオスのブアソン首相を招き、第52回FECアセアン問題研究会を帝国ホテルで開催した。今年は日本メコン交流年で、2月にFECはアセアン経済事情等調査団をラオスに派遣し、両国の経済交流促進に向けての意見交換をトンルン副首相兼外相ら閣僚と行なっており関係が深まっている。歓迎昼食会を兼ねた研究会にはラオス側は主要閣僚、外務省高官、シートン駐日大使等が同席し、FECからは荒木浩FEC副会長・東京電力(株)顧問、野村吉三郎FEC副会長・全日本空輸(株)最高顧問、岡崎真雄FEC副会長・ニッセイ同和損害保険(株)名誉会長、生田正治(株)商船三井相談役、笹森清FEC評議員会副議長等が出席した。
開会に際して稲森俊介FEC日アセアン文化経済委員長・味の素(株)特別顧問が、「2月にFEC経済調査団長として訪問した時に、躍動する貴国をつぶさに視察し貴国の日本への期待を実感した。国の発展に工業化は不可欠であるが強固な農業基盤も必要だ。FECはラオスとASEANの発展に貢献する所存だ。本日は両国関係促進のために率直な意見交換をお願いしたい」と主催者挨拶。続いて埴岡理事長より、「ブアソン首相は今回4度目の来日。麻生首相より来年の国交55周年にチュンマリー国家主席の訪日招待が述べられた」と挨拶があり、ブアソン首相より、ラオスの経済状況、投資環境、両国関係の現状等が述べられ、その後出席者と一問一答の昼食懇談会が和やかに行われた。
ラオスは経済改革を進めており持続的発展への転換期にある。過去10年間平均7%成長を遂げ、マクロ経済は安定している。09年は世界的な景気後退の影響から成長減速は不可避だが、景気対策や国民生活の改善策を進めている。ラオスは政治の安定、法整備、治安等、外国人投資家に良好な投資環境作りに取り組んでいる。投資促進法を国内外の投資家に平等になるよう改正を準備中だ。
両国関係では、「日ラオス投資協定」が昨年発効した。投資阻害要因の早期改善を図るべく設置された、「日ラオス官民合同対話」も重要で毎年開催されている。ラオスは、鉱物、水、森林等天然資源が豊富で、開発ポテンシャルと競争力の条件が揃っている。地勢的にメコン地域の中央に位置し、東西南北の経済回廊と越境交通の要だ。ビエンチャン近郊に国際協力機構(JICA)の協力で経済特区を開発中。
ラオスは経済成長と環境保全の両立に取り組んでいる。日本も協力を表明している拡大メコン地域(GMS)プログラムでは、持続可能な発展を目標とし、水源や森林等の天然資源管理を重視している。日本が提唱する「クール・アース・パートナーシップ」や排出権取引の実現に賛同する。日本のODAはラオスの国民生活に多大な役割を果たしているが、日本からの民間投資は36カ国中5位と低い。FECの協力による民間投資の増加を期待する。両国関係の一層の発展のために、来年国交55周年行事を計画中。
埴岡和正FEC理事長:来年チュンマリー国家主席の来日時に、FECは歓迎行事を主催したい旨お伝え願いたい。(ブアソン首相は「すぐに伝えたい」と快諾)。
笹森清FEC評議員会副議長:国交が開始された1955年の日本は画期的な年。不毛な労使対立が終り、労使協定締結により企業の生産性向上運動が開始され、その後の経済成長を支えた。日本の労使協調は競争力強化の好例として世界で注目された。国際労働機関(ILO)と日本の連合で明日からラオスで労働セミナーを開催するが、両国の労働者交流の一助となろう。
ブアソン首相:日本の労使関係の歴史と経験は有意義で、ラオスへ提言いただきたい。
チュアン内閣府付大臣:以前カイソーン大統領が訪日時に海部首相から明治時代の話を伺い多くを学んだ。日本が短時間で欧米水準に追いついた経緯は貴重だ。ラオスの農民は教育水準が低く、技能訓練水準も企業のニーズに合致しない。連合セミナーから多くを学べる。政府は労使協調を働きかけており、労働者の意識改革と労働者権利保護が重要だ。
生田正治商船三井相談役:ラオスの健全な発展に敬意を表する。当社のラオスへの海上輸送はタイ経由だが特に問題なく、今後も万全を期したい。日本は観光庁を設置し観光立国を目指すが、訪日外国人は年間835万人と仏の1/10どまり。観光は文化であり、相互の観光客の利便性向上が課題だ。ラオスの短期滞在ビザ不要は良い措置だ。
ブアソン首相:観光は多方面へ効果、影響があり有意義な分野。ラオスも重視している。
ポンサワット副大臣:以前はインフラ不備が外資誘致の障害であったが、輸送網整備が進められラオス入国ルートは18へ増加した。ラオスも内閣府に観光担当部署を設置した。昨年のラオス訪問外国人数は150万人で、日本からは3万人。FECの協力で増加を期待する。ホテル等関連施設も増強する必要がある。
稲森俊介FEC副会長・味の素特別顧問:2月の訪問時に、豊富な天然資源活用には外資誘致が課題と理解した。森林面積の拡大には王子製紙も植林事業から協力している。工業化の出発点として少資本による軽工業も考えられる。日本等との人材交流は量の増加と深化が必要。教育水準向上も課題だが、ラオスは天然資源と向き合いながら発展が可能と確信した。
ブアソン首相:皆様の建設的意見に感謝する。工業化と人材開発につての稲盛氏の見解に同意する。ラオスの政策とも合致する。天然資源開発と人材育成が重要課題で、資本不足には内外資本調達で対処する。資源の枯渇や環境悪化にも配慮し、森林資源の保全、再生に留意している。過去に地方の乱開発と自然発火の頻発から森林面積が急減した。現在45%の森林率を2020年に70%へ引き上げる目標で、山岳地住民の平地部移動が重要だ。多雨量地域であり人が入らなければ森林は自然に成長する。破壊的な伐採は厳しく管理し、再生事業も進める。王子製紙の活動も感謝する。ラオスはメコン川支流地域の水供給の4割を占め、水力発電の水源保護のために森林事業を重視する。麻生首相に資金と技術の支援を要請した。
埴岡和正FEC理事長:ブアソン首相は心にラオス国旗を立てていることを強く感じた。国家、国民のために一層のご活躍を祈念したい。(この後荒木浩FEC副会長と首相が記念品を交換する)。
(田丸周FEC常任参与・(株)リケン常勤監査役・記)